2017年8月、新サービス「VMware Cloud on AWS」が、AWS(Amazon Web Services)の米国西部リージョン(広域データセンター群)で提供開始された。2018年中には、日本の東京リージョンを含む全リージョンへ展開しAWSの標準サービスとなる予定だ。ヴイエムウェアとの共同開発に約1年を費やしたサービスは、オンプレミス(自社所有)環境からAWSへの移行を促進する奥の手である。新サービスに賭けるAWSの狙いを見よう。

「VMworld 2017 US」でVMware Cloud on AWSを紹介する、ヴイエムウェアのパット・ゲルシンガーCEO(左)、AWSのアンディ・ジェシーCEO
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 「あらゆるシステムをAWSで動かせるようにする」。AWSのアンディ・ジェシーCEO(最高経営責任者)は、万能インフラを目指す同社サービスの開発方針をこう話す。実現に向けて、利用者のフィードバックに耳を傾けながら拡充させてきたサービスは合計で90を超える。なかでも、独自データベース「Amazon Aurora」や、ストリームデータ処理サービス「Amazon Kinesis Streams」、イベント駆動型コード実行サービス「AWS Lambda」などの人気が高く、国内でも採用事例が増えている。

 こうしたAWS生まれのサービスを活用し、ネット企業が中心となって新たなビジネスを次々と立ち上げてきた。クラウド上で一から作る「クラウドネイティブ」なシステムは、いわゆるレガシーシステムのしがらみと無縁であり、開発スピード優先で製品やサービスを選べる。一方、セキュリティや堅牢性といった要件が厳しいエンタープライズシステムのAWS利用は一部に留まる。「(動画配信サービスの)Netflixのように全てがAWS上にある例もあるが、ほとんどのエンタープライズはクラウドジャーニーの初期段階にある」(ジェシーCEO)。

 オンプレミス環境で稼働中のシステムをいかにAWSに引き込むか、これが同社が直面する課題である。日本では、2017年初頭の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)による“AWS採用宣言”から、クラウド活用の潮目が変わりつつある。金融業界を中心に腰の重いエンタープライズユーザーもクラウド採用に動き出したのだ。ただ2017年5月時点でMUFGがAWS上で本番稼働しているシステムは5つに過ぎないなど、全面採用にはほど遠い。

 エンタープライズシステムを引き込む施策を矢継ぎ早に投入する。これがAWSが進める戦略の眼目だ。

 2017年5月には、日本国内で一つだけだった東京リージョンに加え「2018年前半をめどに、特定顧客の利用に限定した大阪リージョンを開設する」(アマゾン ウェブ サービス ジャパンの長崎忠雄代表取締役社長)と発表。自然災害発生時などBCP(事業継続計画)対策の必要性から、東京リージョンとは地理的に離れた国内第2リージョンを求めるエンタープライズユーザーの声に応えた。

 オンプレミスからAWSへのシステム移行に当たっては、大量データのコピーがボトルネックになるケースもある。そうした顧客に向けた大容量オフラインストレージ「AWS Snowball」が、この9月に東京リージョンでも利用可能になった。

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