福岡県福岡市のトライアルホールディングスは2017年中にエッジコンピューティングを活用した新システムを本格導入する。ディスカウントストアであるトライアルカンパニーの親会社である。

図●エッジ処理を使った遠隔監視システムの特徴
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 新システムの仕組みはこうだ。店舗内に数十台のネットワークカメラを設置し、客の動きを撮影して動画データで記録する。データは店舗内に設置した専用サーバーで解析。客の動きを示す「動線データ」に変換してクラウドに送る。

カメラを使って客の移動の流れを解析
(出所:トライアルホールディングス)
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 動線を分析して商品の陳列や仕入れ計画を最適化するのが狙いだ。動画だけではなく客の動きという意味を持つデータだけをクラウドに送り、客がどの商品棚の付近に長く滞在しているのかといった傾向を見つけ出す。

データ量を800分の1に減らす

 カメラが撮影した動画データはクラウドには送らない。通信データ量を減らすためだ。「収集したデータをどこで処理するのが合理的かと考えると、エッジコンピューティングに行き着く」とトライアルホールディングスの西川晋二取締役副会長グループCIO(最高情報責任者)は話す。

 トライアルホールディングスが導入するネットワークカメラは「1日に1台当たり5.5ギガバイト分」(西川グループCIO)の動画を撮影できるという。前提条件となる画像サイズはVGAで640×480ドット。ビットレートは毎秒512キロビット、フレームレートは毎秒5フレームだ。

 カメラの台数は店舗の大きさにもよるが、1店舗当たり約50台。合計すると1日に1店舗から275ギガバイトの動画データが送られる計算だ。展開する店舗数は全国に約200店。全店を合計すると1日当たり55テラバイトになる。西川グループCIOは「クラウド上に全てのデータを吸い上げるのは不可能に近い」と話す。

 店舗内のエッジサーバーでデータを変換すると、カメラ1台当たりの容量は6.8メガバイトと800分の1に減る。通信コストも大幅に削減できる。

 エッジで処理するメリットは通信コストの削減だけではない。動画データには来店客の顔も映っている。プライバシー保護の観点からも、動画データをそのままクラウドに送るのは避けたいのだという。クラウドのセキュリティレベルが低いわけではないが「流出させてはいけないデータは、外に持ち出さないのが一番だ」と西川グループCIOは話す。

 トライアルホールディングスは2016年に同システムの試験版を構築し実証実験を進めてきた。舞台は福岡県田川市内と佐賀県唐津市内の2店舗だ。田川市の店舗には合計で約50台、唐津市には約30台のネットワークカメラを導入した。システム開発は主にパナソニックが手掛けた。ネットワークカメラが撮影した動画データの人物検知の技術は、パナソニックのグループ会社のPUXが担った。

 実証実験によってそれまでは分からなかった新たな傾向が発見できたという。例えば「ペット用品を店の奥に陳列すると、来店客の動線が全体的に奥に向かいやすくなる傾向が見て取れた」(西川グループCIO)という。実証実験を進めた2店舗では商品陳列のレイアウトを一部変更したところ、店の奥を訪れる来店客数を約2割増やせた。このことによる売り上げへの影響は非公開としているが、西川グループCIOは「さらなるデータ解析を通じていろいろと検証していきたい」と話す。

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