2017年9月末にも100%クラウド化を実現する東急ハンズが、全面移行の方針を立てたのは2012年のこと。最初の関門は、クラウド化に難色を示すITベンダーに対する協力の要請だった。

 「これならば、社内システムを移行できそうだ」。東急ハンズのIT部門を率いる長谷川秀樹執行役員オムニチャネル推進部長が米アマゾン・ウェブ・サービスのAmazon Web Services(AWS)をこう評価したのは2012年に入ってからのことだった。自社システムで利用していたサーバーのシステム要件を満たすスペックの仮想サーバーが用意されていたからだ。長谷川氏は2010年にも一度、AWSを調査したことがあったが、そのときは仮想サーバーのメモリー容量が足りないことなどから採用を見送っていた。

写真●東急ハンズの長谷川秀樹執行役員オムニチャネル推進部長
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 IT部門でAWSの動作を検証し、業務システムでも使えると判断した。やるならば徹底的に進める。長谷川氏は“聖域”を設けず「今、オンプレミスにあるシステムを、全てAWSに移す」と決断した。2012年10月のことだ。当時、ネット企業などを除けば、全ての社内システムをクラウドに移行すると判断したのは珍しかった。

 注目すべきは、クラウドへの移行順序だ。クラウドへの移行を進める企業の多くは、重要度の低いシステムから始める。しかし、東急ハンズは全システムをほぼ同時に移行することにした。「移行するならば、全部一気に進める。中途半端な移行は余計にコストが掛かる。もしダメなら全部オンプレミスに引き返す。間違いに気付くなら早い方がよい」。長谷川氏はIT部員にこう言い聞かせた。

 オンプレミスのシステムをAWSに移行するために、最初の関門はITベンダーの協力を取り付けることだった。独自開発のシステムを増やしたとはいえ、会計や人事、POSシステムなどはパッケージソフトを使用していたためだ。これらのシステムも全てクラウドに移行するには、どうしても導入したITベンダーの協力が不可欠だった。

「当社のシステムで動作検証すればよい」

 ITベンダーにクラウド移行の計画を持ちかけると、「稼働実績がないので無理です」とほとんどが難色を示した。当時、多くの業務パッケージメーカーはAWSでの動作保証をしていなかったからである。

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