2017年9月末をめどに、完全クラウド化を実現する東急ハンズ。成功の要因には、システムアーキテクチャーの刷新とIT部門の開発力強化があった。象徴といえるのが、社内要員だけでメインフレームを撤廃しLinux環境へ移行したこと。このプロジェクトを完遂したことで100%クラウド化へ舵を切ることができた。

 東急ハンズが完全クラウド化を実現できた要因の一つは、自社開発を進めてきたからだ。店舗の担当者を異動させることでIT部員を増やした。

 2008年、渋谷店からIT部門に異動したのが浅田茂太氏。入社3年目の同氏は特に希望していなかったIT部門への異動を上司から突然言い渡され、「Excelの操作くらいしかできない自分がなぜ?」と戸惑った。

写真●ハンズラボの浅田茂太イノベーショングループチーフエンジニア
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 配属後、浅田氏は初対面したIT部門長の長谷川秀樹氏から「まず、これを読んで」とシェルプログラミングの技術書を手渡された。迷いのあった浅田氏だが「こうなったらやるしかない」と覚悟を決めたという。

現場の要望をどんどん取り込む

 2008年10月に自社開発の経営承認を得ると、一気に全システムの刷新に取り掛かる。基幹システムの一つであるMD(マーチャンダイジング)システムのアドオン機能を次々と作り込んだ。例えば、他店舗の商品在庫を検索できる「商品カタログ」や店舗イベントの開催結果などを共有する「イベントの泉」といった機能を構築した。

 商品カタログの機能を開発した浅田氏は、リリース後の反響に驚いた。店舗の現場から「これは便利だ」という声が相次いだからだ。IT部門の仕事が現場に貢献していることを実感した。

 感謝の声と同時に「さらにこんな機能が欲しい」と追加機能の要望も多数寄せられた。その要望を受けて、すぐに直す。また要望が来る。浅田氏だけではなく、IT部員の多くがこのサイクルを繰り返し、開発スキルを高めていった。

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