パブリッククラウド(以下、クラウド)の導入を阻む障壁の一つとして、信頼性に対する懸念がある。実際に、大規模障害がしばしば発生する。

 Amazon Web Services(AWS)では米バージニア北部リージョン(広域データセンター群)で2017年2月28日(現地時間)に、オブジェクトストレージサービス「Amazon S3」の大規模障害が発生。復旧まで4時間以上を要した。Microsoft Azureでは、同年3月8日と31日の2度にわたり東日本リージョンで、同月28日には西日本リージョンで、それぞれ数時間にわたる大規模障害を起こした。

 こうした大規模障害の報道を見て、クラウドに対して悪い印象を持つ経営層は少なくないだろう。その印象は、「クラウドは信頼性が低い」「従来のオンプレミス(自社所有)環境のほうが安心だ」といったことだ。クラウドの導入を進めるには、これらの印象を覆す必要がある。

 そのカギは、オンプレミスは絶対的に安心できるという過剰評価を改めること、クラウドにはシステムの信頼性を高めるさまざまな手立てがあると示すことだ。まずは、オンプレミスへの過剰評価を改めた事例を紹介する。

堤防決壊でオンプレミスのサーバーが水没する

 「従来のオンプレミス環境は、調べると決して信頼性が高くなかった」。こう語るのは、土木、建築事業やしゅんせつ事業を手掛ける小柳建設の穂苅洋介総務部部長だ。

 小柳建設の本社がある新潟県三条市では、近年大規模な水害が続いている。河川の堤防が決壊した水害では、業務が停止して倒産に追い込まれた地元企業もあるという。

 穂苅部長らが、堤防決壊でオンプレミスのシステムにどんな被害が出るのかをシミュレーションしたところ、重要なデータの入ったサーバーが水没する危険性があることが分かった。

 危険性はそれだけではない。過去には、本社施設に設置していたサーバーのディスクが立て続けに故障したこともあった。近隣を通る鉄道の振動が原因のようだった。

 穂苅部長らは、オンプレミスのこうした問題点を経営層に説明し、BCP(Business Continuity Planning)対策とセキュリティ強化を図るため、Azureに移行する承認を得た。2016年9月、基幹業務システムをAzure上に全面移行し、本格運用を開始している。

右から小柳建設の和田博司総務部ITシステム課課長と穂苅洋介総務部部長、小柳卓蔵代表取締役社長、ティーケーネットサービスの石垣比呂志リソースセンターITコーディネータシニアコンサルタントと、武田勇人代表取締役社長
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