政府の旗振りのもと、残業抑制などの働き方改革に取り組むIT企業のA社。社外には以前より残業が大幅に減ったとアピールしているものの、現場で働くITエンジニアの表情は晴れない。それどころか、「ジタハラ(時短ハラスメント)だ」という憤りの声さえ聞こえてくる。

 

 原因は、“改革”が経営層など上からの押し付けばかりだったためだ。社員が残業しにくくなる社内規定を新設したり、20時以降にオフィスの照明を強制的に消したりといった具合である。仕事量は以前と変わらないのに残業でこなせなくなったため、現場は途方に暮れてしまった。

 A社とは対照的に、働き方改革で活気づくIT現場もある。そうした現場に共通するのは、ITエンジニアが自らの技術やエンジニアリングの知見を生かし、主体的に改革を仕掛けていることだ。面倒な作業をやらずに済ませられないかや、話題の技術をチームの業務に生かせないかを考え、実践している。

働き方改革を仕掛ける現場は活気づいている
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 一例は、サッポロホールディングス傘下でITを含む間接機能を担うサッポログループマネジメントである。同社グループIT統括部の河本英則営業情報グループ課長代理らのチームは、社内からの問い合わせの一部を人工知能(AI)で代替する取り組みを推進し、2017年11月に運用を開始した。「問い合わせの応対に取られている時間を本来の業務に当てられるようにして生産性を高めたい」と河本氏は力を込める。

 本来であれば、「働き方改革」というメッセージはIT現場にとっても歓迎すべきものだろう。かつて「きつい」「厳しい」「帰れない」 の3K職場などと呼ばれたIT現場。最近でも長時間の残業が余儀なくされているITエンジニアは少なからずいる。

 厚生労働省の委託で情報サービス産業協会が実施した「平成28年度 業界団体等と連携したIT業界の長時間労働対策事業」の調査によると、「過労死ライン」とされる月間80時間以上の残業をしているIT人材の割合が4.5%だった。今はそんな状況を変えるチャンスといえる。

新しいことを始める前にやめることを可視化する

 では、IT現場が主導して働き方改革に取り組むときは、どのように進めるとよいのだろうか。成果を出している現場を取材したところ、大きく4ステップを踏むことが分かった。

現場が仕掛ける働き方改革のステップ
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 最初のステップは「やらないことを可視化する」である。働き方改革という言葉を聞くと、「改革だから新しいことを始めないと」と思うかもしれない。だが、すぐに新しいことに取りかかってしまうと、ますます忙しくなってしまう。先に必須ではない業務や作業を洗い出し、それらをやらないようにして時間を作るわけだ。

 必須ではない業務・作業をやめて時間の余裕ができたら、第2ステップに移る。「やることの所要時間を可視化する」だ。必要な業務・作業の所要時間が見えることで、時間がかかりすぎているものがないかなど、改善の余地を探る。

 業務・作業の所要時間を可視化すれば、改善すべき対象が見えてくる。人手では改善しにくいものもあるだろう。そこで3番目のステップ「必要だが大変なことを自動化する」を踏む。

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