痛みを伴って多重下請け構造は縮小へ

 ユーザー企業のIT投資がフロンティアの領域へシフトすることで、当然、人月商売や多重下請け構造を支えるオールド世界全体のパイは小さくなる。「日本は世界一メインフレームやオフコンを抱えている国で、ある程度の規模のSIerなら最悪でも10年以上は保守案件で食える」との意見もあるが、市場縮小インパクトは相当なものになるはずだ。

 さらに人月単価の低下が進む。こんな意見がある。「40代の社員の大リストラを見てITベンダーで定年まで働くのは難しいと感じ、ユーザー企業へ転職した。今後はクラウドの利用が進む。クラウドだと開発や保守でもお金を取りにくくなるから、やり方を変えられないITベンダーは厳しくなる」。ITベンダーの営業担当者も「マイナンバーなどの“特需”を除けばクラウドやオフショア開発への移行が加速するのは明白」と指摘する。

 中堅中小のユーザー企業の案件はさらに厳しくなりそうだ。そうしたユーザー企業を顧客とするITベンダーの技術者は、こう証言する。「当社はみずほ銀行やマイナンバーなどの大型プロジェクトに関わっておらず、受託案件の料金減、受注減が年々続いている」。SIバブルに沸く大手SIerにはまだ“見えない危機”だが、既に中堅中小のITベンダーにとっては危機が顕在化している。

 こうしたオールド世界では、先に述べたように人月商売や多重下請け構造がしばらくは変わることはない。この点はほとんどの読者も私もアグリーだ。そうすると今後、まずは多重下請け構造のボトムにいるITベンダーや技術者から順次仕事が失われていくだろう。SI案件が全て無くなるわけではないから、これまでの不況期と同様にSIerは下請けを切ることで生き残りを図るだろうけど、今回ばかりは生き残れる保証は無い。

 いずれにせよ、どこまで縮小するか予測するのは難しいが、人月商売のためにIT業界全体で大量の技術者を抱えていることはできなくなる。つまり、人月商売と多重下請け構造の問題は、ユーザー企業のIT投資領域のシフトによって、あらかたが強制的に片付いてしまう。

 「市場の変化でIT業界の技術者の雇用問題が解決するというのは楽観的すぎる」という読者の意見がいくつかあったが、私も決して楽観的には考えていない。むしろ悲観的だ。今の大型プロジェクトが終了し「技術者不足」が解消したあかつきには、人月商売と多重下請け構造の“解決”に向け、かなりの痛みを伴った調整が起きると予測している。

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