あの人に動いてもらうにはどうしたらいいのか――。変革を伴うITプロジェクトのリーダーは、技術的な課題だけでなく人間的な問題に悩むことが多い。「プロジェクト関係者に思うように動いてもらえない」という苦労はよく聞かれる。上司や他部門の責任者に対してはもちろん、特に最近では、年上の部下の言動に頭を抱えるリーダーが少なくない。

 プロジェクト関係者が思うように動かない場合の対処策については、日ごろの取材の中でことあるごとに聞いてきた。そのなかでも、「そんな考え方があったか!」と思った方策を最近伺ったのでこの場で紹介したい。

 ただ、その考え方について書く前に、私がなぜ驚いたかを明確にするため、これまでに聞くことの多かった対策について触れておきたい。読者のなかには当然のように実践されている方もいるかもしれないが、その場合は“答え合わせ”としてお読みいただきたい。

「リレーションマップ」で攻略シナリオを作る

 立場や部門の異なる相手を動かす方策の王道は「相手が抵抗する原因を探り、その問題を一緒に解決すること」だろう。要は相手が反論する理由をなくすということだ。知恵と労力は必要になるが、敵対関係を協調関係に変えることでプロジェクトは進み出すだろう。優れたリーダーがまず考える正攻法はこれだと思う。

 会話のテクニックとして「相手のメリットやデメリットについて言及する」リーダーも多い。「この新サービスがうまくいけば、そちらの部門の売り上げが増えますよ」と効果を示したり、逆に「本気で要件定義に参画してもらえなければ、システムの刷新後に業務負荷が増えてしまうかもしれません」と通告したりする。どちらの場合でも、相手にプロジェクトを他人事ではなく、“自分事”として考えてもらうためのワザだ。

 事態が複雑なケースでは、戦略的な打ち手として「相手の性格や職場での人間関係を考慮して対策を練る」リーダーもいる。

 例えば、「○○営業部長はXX取締役の意見には逆らわない」「△△マーケティング課長は□□事業部長が苦手」といったキーパーソン同士の人間関係を、表や図、メモなどでまとめるのだ。整理した情報を基に、どのような順序で誰から攻略するか、といったシナリオを決める。

 こうした図表類は「リレーションマップ」や「パワーマップ」という名称で呼ばれることがある。ITベンダーのプロジェクトマネジャーやITコンサルタントなどが顧客企業に内緒で作成していることが多い。

 以上が、私がこれまで聞いてきた、人を動かす工夫の主なものだ。いずれも、相手をよく研究し理解して対処策を考えることだといえる。

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