ソフトバンクがその気になれば、銀行を凌ぐ金融サービス会社になれるのではないか――。筆者は最近、そんなことを考えている。IoT(インターネット・オブ・シングズ)での覇権を目指している同社が、どこまで金融事業に情熱を注ぐかは分からない。しかし、少なくとも同社のアプローチは、ある企業の成功と重なるものがある。

 元々、モバイルと金融サービスの相性は良い。最大の成功事例は、ケニアの電子マネーサービス「M-PESA」だろう。通信キャリアのサファリコムが運営するM-PESAは支払いや決済に使えるほか、遠隔地に送金したり、M-PESA取扱店で現金として引き出したりすることが可能だ。ケニアでは人口の約半数が登録し、GDP(国内総生産)の約4割がM-PESA経由とされるほどだ。

 日本でも、通信キャリアは金融事業に強い関心を示してきた。NTTドコモは2005年に、非接触型クレジットカードの草分けとも言える「iD」をスタートさせている。KDDIは2008年、三菱東京UFJ銀行と共同でインターネット専業のじぶん銀行を設立したのを皮切りに、保険事業にも手を広げている。

 一方のソフトバンクは通信業界のライバルたちを横目に、金融事業に対して一定の距離を保ってきた。その背景には、かつてソフトバンクグループの金融事業会社であったSBIホールディングスとの暗黙の境界線があったとされる。しかし同社の完全独立から10年の時を経た2016年、ソフトバンクは金融業界への本格参入に転じた。

ソフトバンクグループの孫正義社長
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