日立製作所は2017年12月25日、教師データなしで人工知能(AI)がデータを生成し学習するビジネス向けのAIを開発したと発表した。実用例としてサプライチェーンにおける在庫の適正化などを挙げる。ソースコードを日立グループ内に公開することで、同社が提供する製造や小売、金融といった業界向けのサービスを強化する狙いだ。

 日立が開発したのはコンピュータ上でAI同士を対戦させることで大量のデータを生成し、AIが自ら学習する「自己競争」の考え方を取り入れたビジネス向けのAI。AIによる囲碁の対戦ゲームなどには自己競争の考え方はすでに取り入れられており、人間と対戦して勝利した例もある。「AI同士を戦わせる原理をビジネスの世界に応用させた」と日立製作所の研究開発グループ技師長の矢野和男理事は今回の技術を説明する。

日立製作所の研究開発グループ技師長の矢野和男理事
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 自己競争によるAI技術の活用先として、日立が特に期待しているのはサプライチェーンの効率化だ。「ビールゲーム」を題材に開発したAIを検証したところ、熟練者の判断に比べてAIによる判断の方が在庫や欠品による損失を約4分の1に減らせたという。ビールゲームはマサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院の教授が考案したビールを流通させるシミュレーションゲームである。

 矢野理事によれば、AIのビジネスへの活用のパターンは大きく分けて2つあるという。1つは店舗や製造業のオペレーションなど過去の類似事例のデータが大量にある場合。日立は金融や流通、物流など70件ほどに対応してきたという。もう1つは新しい戦略や競争相手、災害などの未知の脅威への対応など過去のデータがない、もしくは少ない場合だ。「前者についてはHitachi AI Technology/Hとしてサービスを提供してきたが、今回の研究は後者のニーズに応えるものになる」と矢野理事は意気込む。業種などは明かさなかったが、すでに引き合いがあるという。製造や小売だけでなく、電力や金融などの業界にも今回の技術の適応を検討している。