2017年7月27日、クラウド会計ソフトを巡る特許権を侵害したとしてfreeeがマネーフォワードを提訴していた裁判の第一審判決が出た。東京地方裁判所はfreeeが求めていた差し止め請求を棄却。マネーフォワードが勝訴した。

 マネーフォワードの辻庸介代表取締役社長CEO (最高経営責任者)は、「裁判所から正式に特許侵害はないとの結論が出た。これからはユーザーへの価値提供に集中したい」とする。一方、第一審で敗れたfreeeの佐々木大輔社長は日経FinTechの取材に応じ、「残念だが、スタートアップ業界で知的財産への意識が高まったという意味で意義はあった」と語った。控訴するかについては「よく検討して決める」(佐々木社長)と明言を避けた。

マネーフォワードの辻庸介代表取締役社長CEO(右)とfreeeの佐々木大輔社長(日経FinTechのイベントで撮影)
撮影:新関雅士
[画像のクリックで拡大表示]

 裁判の焦点となったのは、クラウド会計ソフトにおける勘定科目の自動仕訳機能だ。freeeは、明細情報に含まれる複数のキーワードに優先順位を付け、勘定科目をひも付けた対応テーブルと照合することで自動仕訳を実現。特許を取得していた。

 freeeが問題視したのは、マネーフォワードが2016年8月30日、「MFクラウド会計」に自動で勘定科目を提案できる機能を追加したことだ。これを自社の特許に抵触していると判断し、同年10月21日に提訴に踏み切った。

 裁判の中でマネーフォワードは、特許侵害の事実はないと真っ向から反論。同社は過去の取引データと仕訳データの組み合わせを機械学習させることでアルゴリズムを生成し、自動仕訳を実現している。freeeの特許とは仕組みが異なると主張した。

 勝訴判決を受けて会見を開いたマネーフォワードの辻社長は、「裁判の対応でサービス提供のスピードが遅れた部分があり、心苦しい状況だった」と振り返り、「これから本質的な価値を提供することに集中していきたい」と語った。

 マネーフォワードは今回の裁判を機に、知的財産戦略を変更する。「OSS(オープンソースソフトウエア)に代表されるように、ソフト開発は助け合いながら価値を作り出す世界と考えている。そのため、今までは特許にフォーカスしてこなかった。ただし今後は、取得すべきものについては特許を取得していく」(辻社長)。

 freeeの佐々木社長は、「スタートアップ企業が独自の技術と創意工夫でイノベーションを生み出すには、合理的な範囲で権利を主張すべきと考えている。それが認められなかったのは残念」と話す。「ソフトウエアの特許侵害を立証する難しさはあった」とも振り返った。

 一方、「(裁判を機に)この半年でスタートアップ業界でも、知的財産を守るべきとの機運が高まったと実感している。その意味では意義があったと思っている」と一定の手応えも口にした。

 freeeは2週間以内に知的財産高等裁判所に控訴することができる。佐々木社長は「検討して決める」とした。