NTTファシリティーズは2018年1月18日、オフィスビルなどにおけるIoT(インターネット・オブ・シングズ)とAI(人工知能)を活用した最新技術を紹介するイベント「NTTファシリティーズR&Dフォーラム」を開催した。

 藁谷至誠研究開発部長はIoTやAIの研究開発を進めるうえで、同社が長年手掛けてきた情報通信インフラの保守運用を通して得たデータが強みになると語る。「我々が通信インフラを管理するビルは1万棟あり、主要なシステムだけでも20万の装置がある。それらから蓄積されるデータ量は数百億レコードにもなる。IoTとAIによって膨大なデータの収集や分析を自動化することで、これまでとは違う気付きを得られる」。

 IoTやAIの社会普及の促進には、「Nudge(ナッジ)」と呼ぶ概念が重要と訴える。ナッジは行動経済学の理論的発展に貢献したことでノーベル経済学賞を受賞した、米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授らが提唱する概念だ。「肘で軽くつつく」という意味の英単語で、肘で軽くつつくように相手に適切な選択を促したり、危険を回避させたりする仕掛けや手法を指す。

自ら行動するよう促すことでAIへの不信感を払拭

 ナッジを重視するのは、IoTによって蓄積したデータからAIが合理的な解を導き出したとしても、「人間は非合理な存在なので、AIの提案通り行動するとは限らない」(藁谷部長)からだ。AIの提案を人が受け入れやすいように、そっと行動を促すナッジの手法をシステムに組み込むことが大切になるという。

 藁谷部長はナッジの実証例として、同社のイノベーションセンターでの空調管理に関する取り組みを紹介した。同施設では「BIS(Building Information management System=ビル情報管理システム)」と呼ぶ仕組みで、センサーから収集した気温、湿度、室温、CO2排出量などのデータを一元管理し、AIによるビッグデータ分析で空調や照明などを最適制御する実証実験を行っている。

NTTファシリティーズイノベーションセンターでのナッジの実証実験例
[画像のクリックで拡大表示]

 同施設では社員の位置情報も把握している。AIが外が涼しいので窓を開けたほうが合理的と判断した場合、ICタグの情報を基に、窓際にいる社員の携帯電話に窓を開けるように促すメールを送る。メールの内容は窓を開けることで快適な環境になったり、CO2がこれだけ削減できたりするといったもの。

 ナッジの手法を組み込むことにより「AIに人が操作されるのではなく自ら行動を選ぶよう促すことで、結果に対する責任感や満足感が高まる」(同)。仮に窓を開けて多少蒸し暑くなっても、自分が選んだ行動なので納得しやすい。藁谷部長は「AIに対する不信感を払拭するためにも、ナッジのような行動科学の考え方が有用」と話す。