キーワードは「移動困難者のサポート」「成長し輝き続ける街」「“安心”というおもてなし」――。これらは、街づくりにおける“未来の価値”に関するセッションでの会話から出てきたものだ。

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写真1●日立製作所の執行役常務アーバンソリューションビジネスユニットCEOである小林圭三氏
セッション全体の案内役として3人のゲストを迎え、ディスカッションした。

 2016年10月28日、日立製作所が主催する「Hitachi Social Innovation Forum 2016 TOKYO」(会場:東京国際フォーラム)のビジネスセションでは、「これからのまちづくりが創出する価値とは」と題したビジネスセッションが開催された。「人の移動」「魅力のある空間や街」「安全・安心」の3つの観点について、それぞれゲストを招き、日立製作所の執行役常務 アーバンソリューションビジネスユニット CEOである小林圭三氏が案内役となって、未来の価値についてディスカッションした(写真1)。ゲストは、ロボットタクシー社長 兼 CEOの中島宏氏(人の移動)、東京急行電鉄 取締役 執行役員 都市創造本部 副本部長の濵名節氏(魅力のある空間や街)、セコム 常務執行役員IS研究所 所長の小松崎常夫氏(安全・安心)の3人である。

無人運転タクシーを社会システムに溶け込ませる

 トップバッターのロボットタクシーは、ディー・エヌ・エー(DeNA)と自動運転の技術開発に長けたZMPによる合弁会社。今後、自動運転技術を採用する“ドライバーレス”のタクシー事業を展開しようとしている。

 公共交通の廃止やドライバー不足により、現在、地方の過疎地では移動困難者と呼ばれる人々が増加している。中島氏は「安価で安全でドライバーレスのサービスを提供しないことには解決できない。DeNAはもともとサービスを提供してきた会社。ロボットタクシーも技術ありきではなく、ニーズドリブンで物事をとらえている」と考え方を示すとともに、「技術的にも法律面でも現実に近づいてきている。2020年の東京オリンピックの頃に街中を走るために、準備を進めている」と話した(写真2)。

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写真2●ロボットタクシー社長兼CEOの中島 宏氏

 一方で、自動運転タクシーは既存のタクシーに置き換わるものではないことを強調した。「AI(人工知能)はまだまだ人間のサービスには劣る。提供も限定地域の予定で、ポイントツーポイントで主要な道しか走らない。単純な送迎、ちょい乗りでよければぜひ使ってほしい」(中島氏)。中島氏は、今までのタクシーのビジネスモデルを破壊するものではなく、社会システムとして地域に溶け込んでいく形が理想だとした。

 ディスカッションで、小林氏が「事業として、単なる無人タクシーだけでなく、他の交通機関との連携を含め、より幅広いサービスも目指しているのか」と切り込むと、中島氏は「地域交通との兼ね合いや見守りのニーズなどもあり、単純に1つのサービスで閉じられる性格のものではない。むしろ包括的に取り組むことを目指さないと、付加価値を発揮しきれないだろう」と答えた。

 今後については、「小さなエリアで実証実験を成功させ、それを積み重ねて、本当に必要とされるサービスを作っていく」と話す。最終的には、過疎化モデルを筆頭に、大都市モデル、地方都市モデルなどニーズに合わせて、いくつかのタイプのサービスを展開していくことになるだろうと見通しを語った。

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