写真:村田 和聡

大勢の生徒の前で、先生が授業を進める──。江戸時代の藩校や寺子屋から約300年続く学び舎の風景がデジタルで激変しつつある。先端ITを教育に活用するEdTech(エドテック)の導入が相次いでいるのだ。新たな教育現場で教師役を務めるのはデジタル教材。生徒は自分のペースで学習し、人間の教師は主にサポートを担う。教育の質向上に加えて、教師不足への対応にも期待がかかる。EdTech活用に挑む教育現場の今を追った。

 「ワット・イズ・ユア・ネーム?」。教室で小学5年生の生徒が机の上のPCに話しかける。すぐさま画面右上に「55点」と表示される。発音の採点結果だ。「あ、私のほうが上だ!」と隣りの生徒と結果を見比べながら、発音の練習を繰り返す──。

前原小学校(東京・小金井市)の公開授業の様子。1人1台のPCで個別に学習する

 東京・小金井市にある市立前原小学校の授業風景だ。同校は2017年4月から、PCを使って生徒が自ら学べる授業を本格的に取り入れている。

 先生役を担うのはデジタル教材。英語の授業ではオンライン学習教材「EnglishCentral」が単語の意味や正しい発音を指導する。人間の教師はオンライン教材の使い方を教えたり、学んだ英語で会話をするよう生徒に促したりとサポート役に徹する。

 前原小は全国の小中学校における「EdTech」の先進ユーザーの1校だ。EdTechは金融のFinTechなどと同様の造語であり、教育現場における先進的なIT活用を指す。教育現場のIT活用はこれまで、成績管理など教師の事務作業を効率化する校務システムが中心だった。EdTechは校務システムと連携しつつ、授業そのものの改革を目指している点が新しい。

 生徒はタブレットやクラウド、動画、音声認識の機能などを利用して、自分の実力やペースに合わせて学べる。学習効率を高めやすいと評判だ。

 前原小の石井康友教諭は「自宅でも教材を使って親と一緒に練習し、大人よりも流暢に英語を話す生徒がいるほどだ」と証言する。

 EdTech導入の動きは全国に広がりつつある。東京・渋谷区は2017年9月から区立の全小中学校の生徒が携帯電話網のLTE通信を使えるようにした。自宅でのタブレットを使った学習や、教師とのやり取りに活用する。大阪市も2016年に小中学校のネットワーク整備を終え、1人1台のタブレット配布を完了した。

図 従来の教育用ITとEdTech
授業を変える「EdTech」、全国の小中学校にも
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制度改定で負担増、導入に拍車

 EdTechで特に期待がかかるのが、教師不足の解消である。

 ただでさえ教師は多忙だ。文部科学省の2016年度教員勤務実態調査によると、小学校では33.5%、中学校では57.6%の教師の残業時間が過労死ラインと呼ばれる月80時間を超えている。月平均の残業時間は2006年度の調査に比べて小学校教師が約17時間、中学校教師が約21時間増えた。

図 文部科学省による2016年度の教員勤務実態調査
深刻な教師不足を救う
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 「通常の勤務時間は授業と校務をこなすので精一杯。授業の準備や指導内容の研究は業務時間外になりがちだ」と前原小の石井教諭は話す。

 残業時間が増えている要因の1つが人手不足だ。約30年前に団塊ジュニア世代を指導するため大量雇用された世代が定年退職の時期を迎え、教師不足が加速している。

 新しい指導要領と入試制度がこの状況に追い打ちをかける。教育指導要領が10年ぶりに改訂され、2018年から段階的に導入される。新要領は学習内容を増やすと同時に、主体的な学習能力の育成に向けて学びの質を抜本的に見直すよう要求している。小学5年生の英語の授業時間は年間35時間から70時間と2倍に増える。

 2020年には大学入試制度も変わる。センター試験は「共通テスト」となり、試験内容が拡大。英語は従来の「読む、聞く」の2技能に「書く、話す」を加えた4技能評価になる。こうした制度の変更は教師の負荷増加を招く。

 EdTechが注目を集めるのは、負担増の有力な改善策となる可能性が高いからだ。既に導入している前原小では「板書する集合授業に比べ、準備の手間が半分以下で済む」と石井教諭は話す。前原小の松田孝校長は「授業時間が増えても教師の負担を抑えられる。英語の授業時間が倍増しても怖くない」と自信を見せる。

20年前からEdTechに挑戦

 EdTechに先行して取り組んでいるのは学習塾などの教育関連企業だ。小学校から高校まで4万人超の生徒を抱える学習塾「佐鳴予備校」は1999年から「生徒による自主学習が主体、教師はサポート役」というEdTechが目指す学習形態を実現してきた。

 高校生向けコースは生徒が動画を使った電子教材で学習。サポート役を担う教師は、1人当たり年間100人の生徒を担当する。デジタル教材が教師を務めるので、少ない教員で多くの生徒を受け持つことができた。

 約20年で、佐鳴予備校のEdTech環境は着実に進化してきた。当初は外部の教育事業者が作成した動画教材を利用していたが、自前で制作する方針に切り替えた。「どんな教材が最も効果的か、教材の内容や授業時間などの試行錯誤を繰り返すには自前で開発する必要があった」と同予備校を運営するさなるの増田貴司取締役は説明する。

 2010年には自主開発した電子教材「@will」の運用を始めた。例えば60分の動画コンテンツを15~20分程度に分割し、合間に演習問題に取り組める教材を作った。集中力が続かない生徒がいたからだ。

 同時に動画をデータ配信する形にしたほか、演習問題の採点を自動化した。これが「教師の作業の効率化と質の向上につながった」(増田取締役)。

 教師は生徒の学習履歴や理解度に加えて、卒業生や他の教師が提案したカリキュラムなどのデータをシステムで確認。定期面談時に「ペースを上げないと志望校合格は厳しい」と鼓舞したり、「この教材がきっと役立つ」と提案したりしやすい。

 以前は学習の進捗状況を生徒自身に報告させ、教師が内容を吟味して経験と勘に基づいて指導内容を考える必要があった。新システムで準備の手間を軽減できたのに加えて「教師ごとにバラつきがあったアドバイスの質を平均して高められた」(増田取締役)という。

 同社は2015年以降、クラウド環境への移行も進めている。動画教材の配信基盤をインターネットイニシアティブ(IIJ)のクラウドへ移管したほか、2017年から生徒データなどを管理するデータベースサーバーを米オラクルのクラウドに順次移行している。

 ITインフラの運用効率を高め、増え続ける教材データや生徒データに対応するのが狙いだ。教材の動画は2万本を超えているという。

目指すは「反転学習」

 EdTechの先進ユーザーが次に目指しているのは「反転学習」だ。授業と宿題の役割を入れ替える学習形態を指す。生徒は自宅で新しい知識を自習し、教室では学習内容の発表や議論、応用問題の演習といった復習に取り組む。

 一般的な自主学習と同様、教師は授業を準備する手間が省けて、効率的に教えられる。生徒は自分の得意不得意に合わせて自習し、学習した内容を議論や発表を通じて身に付けられるので、より高い学習効果が得られる。

 佐鳴予備校はタブレットを導入した2016年から、難関大学を目指す中高一貫コースで反転学習を導入している。増田取締役は「板書授業よりも学習効率はけた違いに高い」と話す。

図 佐鳴予備校がEdTechを導入した経緯
先駆者「佐鳴予備校」、進化の歴史(画像提供:さなる)
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 前原小学校も反転学習の要素を取り入れている。普段の授業では各自が教材を使ったり生徒同士で会話したりして英語を学び、月に1回の外国人が指導助手を務める授業で、普段の授業で練習した成果を実践する。

 前原小が利用している英語教材のEnglishCentralは「反転学習を前提に設計している」と、EnglishCentral日本法人の松村弘典社長は説明する。好きな動画を見て英単語の意味や文章の使い方を学ぶだけでなく、音声認識技術を生かして発音の練習から発音した結果の採点までを生徒が1人でできるようにした。「iPhoneの音声アシスタント『Siri』と同様の音声認識技術を利用し、高い認識精度を実現した」と松村社長は話す。

振り返りで学習意欲を維持

 EdTechの最大の課題は生徒のモチベーションをいかに維持するかだ。学ぶ意欲の強い生徒は1人でも問題なく学習するが、意欲があまりない生徒は学習が続かない恐れがある。

 先進ユーザーや教育事業者、教材を開発するベンダーはモチベーションの維持に向けて、様々な工夫を凝らしている。前原小や佐鳴予備校は「教師がいる教室」で学習させることで、生徒のモチベーションを保っている。

 EnglishCentralは利用者の興味を引くコンテンツを作る戦略に徹する。松村社長は「座ってPCを開かせて、アクセスさせるまでが勝負」と話す。英語そのものに興味がない人でも「サッカーが好きならサッカーの動画で英語を学ぼうという気にさせる」(同)。

図 英語学習サービス「EnglishCentral」を使った反転学習の活用イメージ
反転学習が授業の効率を高める(画像提供:EnglishCentral)
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 1カ月のプログラミング学習サービス「WebCamp」を運営するInfratopは「人間の教師とのつながりを意識させることがやる気を生み出す」(大島札頌CEO)。チャット風の画面を通じて生徒は気軽に質問できる。

 教師からも定期的に話しかけて、相談しやすい関係を作る。「在宅での学習が中心でも教師と生徒が常に向き合える」(同)。

 特に効果的なのが2017年5月に導入した「バディーシート」と呼ぶ仕組みだ。毎日の学習内容を生徒が振り返って文章にし、教師と共有する。「ヒントを出してくれないと、次にどう進めばいいか分からない」という生徒の感想に対し、教師が「最初はヒント頼りになるもの。根気よく頑張ろう」と励ます、といった具合だ。

 学習の進捗状況は自動で可視化している。それでもあえて生徒に文章で書かせることで、自分の学習状況について客観的に振り返りができるようにするのが狙いだ。「振り返りに対して教師のフィードバックが得られるので、不安が和らいだり学習の緊張感が保てたりする」(大島CEO)。

図 自主学習のモチベーション向上策
生徒のやる気を維持(画像提供:Infratop、ANALOG TWELVE)
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 ベネッセホールディングスとソフトバンクが共同出資して設立したClassiは2017年4月、生徒と教師のコミュニケーションツール「Classi」に学習の振り返りを共有する機能「eポートフォリオ」を追加した。

 eポートフォリオはテストの成績や生徒が申告した自宅学習時間を自動集計するClassiの機能「生徒カルテ」と連携し、授業やテストを振り返った生徒がその感想や反省点などを入力できる。入力した振り返りに教師からのフィードバックが得られ、定期的に過去の内容を見返すことで「学びのPDCAを回し、主体的に学ぶ姿勢が身につく」とClassiの加藤理啓副社長は話す。

 同社は2018年4月から本格的にeポートフォリオの導入を高校に促し、2018年度内に1000校以上の導入を目指す。Classiは現在、約2000の高校が利用しているという。

ゲーム感覚、幼児が楽しく学ぶ

 EdTechの波は幼児教育にも及ぶ。幼児学習教室のピグマリオンで利用する電子教材を開発しているANALOG TWELVEは自主学習を支援する教材作りを進めている。

 幼児は楽しくなければ学習を止めてしまう。ANALOG TWELVEの赤松隆社長は「音やアニメーションで興味を引き、ゲーム感覚で学習できる教材作りを目指している」と説明する。同社の従業員は2013年から3年間ピグマリオンで教師を務め、その経験を自宅でも幼児が学べる教材の開発に生かしている。

 幼児の興味を引き続けるために、幼児学習の教室では様々な工夫を凝らす。幼児が興味を持つ要素を問題に絡めて出題する、テンポよく次々と問題を切り替える、などだ。

 教材にこうした要素を取り入れようと試行錯誤を繰り返して、電子教材の演出を決めていった。教材を教室で利用し、幼児の反応を見ながら改良を続けている。

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徹底的に分かりやすさを追求

 デジタル教材が教師役を務めるEdTechでは、教材の分かりやすさが命綱となる。いくら生徒のやる気が高くても、教材の内容が理解できないとモチベーションは下がってしまう。

 教材の分かりやすさを徹底して追求して教材の完成度を高めているのが、教育関連ベンチャーのdivが運営するITの総合学習教室「TECH::CAMP」だ。電子教材による自主学習が基本だが、オンライン学習ではなく教室を構え、教師役(メンター)に質問し放題、というのが売りだ。

 質問が多すぎて、教師に負荷がかかる気がするが、TECH::CAMPの事業責任者を務め教材開発を統括する阿部幸一郎氏は「質問が出ないほど分かりやすくするのが教材作成の方針。教材が究極に分かりやすければ質問は減り、対応に困ることはなくなる」と言い切る。

 TECH::CAMPではまず教室で生徒が電子教材を使って自習する。教室での学習を基本としているのはモチベーションの維持が狙いだ。

 教室に常駐するメンターは教室で受けた質問の中で、教材の作成者にフィードバックしたほうが良さそうなものについて、質問者にどう説明したかや質問内容などを報告する。「説明に困った」「同じ質問をよく受ける」といったものが候補だ。

 教材の担当者は質問内容を分析し、毎週教材に反映する。例えば「説明が難しい」という質問を踏まえ、「冒頭では詳しい説明を省き、プログラムコードを動かしながら解説する」という内容に変えたりする。

 同社は教材の作成を支えるシステム基盤にもこだわる。ソフトウエア開発で使うソースコード管理サービスを参考にして、教材に対する編集履歴を可視化。誰がどのような狙いで教材を変更したかを保存できるようにした。「複数の担当者による改変の効果を検証するためだ」(阿部氏)。

 教材の手直しを繰り返すことで、2014年秋ごろには1つの教室で1日当たり質問が40個以上出ていたのが、2017年9月には10分の1以下に減った。

図 プログラミング教室「TECH::CAMP」の教材開発の流れ
教材を毎週見直す(画像提供:div)
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最後の壁は集合教育

 生徒自身が教材をカスタマイズできるサービスもある。司法試験など難関資格試験のオンライン学習サービス「資格スクエア」だ。

 同サービスの教材は画面の左側に講義の動画を、右側にはテキストの教材を表示する。テキスト部分は生徒自身で編集できる。講義を聞きながら理解した自分なりの表現に書き換えたり、メモを追記したりして使える。

 運営元であるサイトビジットの鬼頭政人社長は、難関試験の受験者にヒアリングした結果から「教科書に書き込んだり、きれいなノートを作ったりと勉強方法は人それぞれだが、『ここだけを見返せば大丈夫』と言えるくらいに情報を集約している点は合格者に共通している」と気付いたという。

 理解度を自動判定して復習問題が自動生成される機能なども利用でき、試験対策の効率化を図っている。「学習方法は資格試験以外にも使える」(鬼頭社長)として、2017年10月にも教材の開発・提供基盤を外販する予定だ。

 反転学習の実現に向けて、EdTechの教材やサービスは急ピッチで充実しそうだ。教育関係者は「最後の壁となるのは集合教育のやり方だ」と口をそろえる。

 反転学習では、集合教育での復習がデジタル教材による学習と同じくらい重要な意味を持つ。生徒が内容を理解できないまま授業を進めたり、授業のスピードが遅すぎて生徒の学ぶ意欲をそいでしまったりすると、学習効果が下がってしまう恐れがある。

 対処策として、ある一定レベルの生徒同士で小集団を作って復習の授業を進める、学習した内容を各自が発表するなど進捗の違いによる影響が少ない形を取る、などの検討が進んでいる。

 前原小の松田校長は「IT無しに授業の改革は不可能」と断言する。Ed-Techの先進ユーザーは自らIT企業などと連絡を取り、新しい教材や指導方法を積極的に取り入れている。

 教育分野に詳しい野村総合研究所の日戸浩之上席コンサルタントは「教育現場は保守的な文化が強いが、何の手も打たないと教師不足などの問題を解決できない。EdTechを契機に、改革に乗り出す動きが少しずつだが広がり始めた」と話す。教育の良し悪しは国の競争力に直結する。江戸時代の藩校や寺子屋設立から約300年。EdTechの普及が日本の将来を左右すると言っても過言ではない。

EdTech導入に不可欠 インフラ整備と教師の覚悟

 「最大の課題は通信ネットワークだ」。内田洋行の青木栄太 学びのコンテンツ&プロダクト企画部部長はEdTechについてこう指摘する。同社は2005年からクラウド型の教科書配信基盤を開発・提供している。だが「インターネット環境が不十分で導入できない学校が少なくない」(同)と明かす。

LAN整備率は9割近く

 文科省が小・中・高校を対象に2016年に実施した調査によると、普通教室のLAN整備率は全国平均で87.7%に達する。しかし教育機関向けのITインフラに詳しいNECの宮野裕之第一官公ソリューション事業部主任は「調査結果ほど通信環境は整っていない。速度が出ないメタル回線しか設置していない学校もある」と指摘する。

 総務省は2018年度の概算要求で学校などの無線LANの整備に20億円を要求している。学校によっては校内LANの整備から見直さないと電子教材を配信できない場合がある。

 学校におけるネットワーク整備の実情は「自治体や学校にも資料がなく、誰も把握していない場合がほとんど」(宮野主任)。NECは2016年に大阪市の小中学校のネットワーク整備を請け負ったが、422校全ての整備状況を1校ずつ確認する必要が生じたという。

 通信速度についても、文科省の調査では毎秒30メガビット以上の超高速回線を整備済みの学校は84.2%に上る。それでも使用する教材によっては速度不足になる可能性がある。

 動画配信サービスを利用するには、生徒1人当たり毎秒3メガビット程度の通信速度が必要とされる。教室の生徒40人が一斉に動画教材にアクセスする場合、単純計算で毎秒120メガビットが必要になる。「導入する教材によっては、超高速回線を整備済みのところでもネットワークの増強が必要になるかもしれない」(宮野主任)。

導入の牽引役がいるかが鍵

 公立学校が通信環境を整備しづらい事情もある。学校は自治体が管理するプライベートクラウドを介してインターネットに接続しているケースが多い。市町村内の全ての学校の通信を集約するので、1校当たりの通信速度は遅くなる。学校に直接インターネット回線を接続する場合に比べて、インフラの管理費用も割高になることがある。ある有識者は「割高な運用コストが学校のインフラ整備を妨げる要因の1つとなっている」と指摘する。

 NECの宮野主任は「ネットワークを整備し、標準的な校務システムを導入して初めてEdTech導入の下地が整う」と指摘する。文科省の調査では16.6%の学校は、現在でも事務のための校務システムを導入していない。導入している学校でもExcelで成績を管理するなど、企業に比べて事務作業の効率化が遅れている。

 環境を整備し、EdTechを導入したとしても使いこなすにはもう1つハードルがある。「教師の抵抗が強い」(前原小の松田校長)ことだ。2016年に電子教材の導入を決め、生徒のPCを用意したが「教師がサポート役に徹しきれず、教材を使いこなせなかった」(松田校長)という。

 状況を打開できたのはEdTech導入に積極的な教師の存在だ。同校の石井教諭はその1人。松田校長の挑戦に共感し、神奈川県の正規教員を辞めて2017年4月から臨時教員として前原小の教師になった。石井教諭が積極的にEdTechを使った授業をすることで「現場の意識が徐々に変わってきた」と松田校長は振り返る。

出典:日経コンピュータ 2017年10月12日号 pp.36-45
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。