九州の北西部に位置する長崎県松浦市の鷹島近海に、直径40メートルのいけすがずらりと並ぶ。総合商社双日の子会社である双日ツナファーム鷹島が運営する本マグロの養殖場だ。同社は2017年8月からIoT(インターネット・オブ・シングズ)や人工知能(AI)を活用してマグロ養殖の効率化に挑む。その目玉はマグロを数える作業を深層学習で自動化する取り組みだ。狙いは養殖コストの約7割を占める餌代の最適化にある。

双日ツナファーム鷹島の大西啓之社長
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深層学習でマグロの「棚卸」

 マグロの稚魚は体重約300グラム。同社は稚魚を毎年1万匹ほど買い付け、いけすに入れて育て上げる。出荷時には約50キログラムと150倍以上になる。30個のいけすに分かれ、最盛期は1日で合計60トンもの餌を食べる。

 与える餌の量(給餌量)や時期は気候や季節、マグロの数で決まる。魚が1キログラム太るのに必要な餌の質量を「増肉係数」と呼ぶ。一般にマグロの増肉係数は15前後で、この係数を小さくできればコストも下がる。小さくするには、マグロの数を正確に把握し、食べ残しが出ないように適切な量の餌を投入する必要がある。従来は職員が属人的な経験に基づき給餌量を決めていたため、無駄が発生しやすかった。

マグロへの餌やりの風景。空気砲でサバをマグロのいけすに打ち出す
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 マグロの数を正しく知ることは給餌以外の面からも重要だ。出荷量や売上予測の重要な指標となるからだ。「マグロの数は養殖場の資産そのもの」。双日ツナファーム鷹島の大西啓之社長はこのように話す。

 同社はマグロの成長に応じて、年間20回ほどマグロを別のいけすに移し替えている。数えるのはその時だ。2つのいけすを網の通路で接続し、移動するマグロの様子をダイバーが水中カメラで撮影。事務所で複数の職員がスロー再生しながら目視で数え、結果を平均し記録していく。数時間かかる単純作業は職員の負担となっていた。

職員が動画をスロー再生しながら目視でマグロを数える様子
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