パッケージの修正費が膨らむトラブルは、今も枚挙に暇がない。実は、この種の問題は海外製より国産製品の採用時に起こりがちだ。かつての国産パッケージはカスタマイズが当然だったが、今は違う。「パッケージは修正しない」という原則を今一度肝に銘じたい。

 パッケージソフトの導入を巡るシステム開発トラブルは、今も収まる気配がない。パッケージを使って安く開発するはずだったのに、カスタマイズ(修正)費用やアドオン(追加開発)費用が膨れ上がってしまう。

 提案段階では1億円と見込んでいた追加費用が、フィットギャップ分析後は3億円になり、終わってみたら6億円に膨張する。ようやく本番稼働したら、今度はパッケージのバージョンアップで5億円請求される、といった具合だ。最初からスクラッチ開発していればもっと安かったのにと後悔しても後の祭りである。

 パッケージ導入に伴うトラブル事例は、海外製ERP(統合基幹業務システム)パッケージを巡って注目されることが多い。だが実際には、日本製パッケージの方がトラブルになりやすい。日本のパッケージベンダーは、安易にカスタマイズして対応しようとする傾向が強いからだ。

 日本のパッケージベンダーはユーザーからの修正要望を簡単に受け入れ、ユーザー企業も「さすが日本企業はサービスが行き届いている」と信じがちだ。この結果、泥沼のプロジェクトに陥る。

 今回紹介する事例は、ある大規模病院における病院管理パッケージソフト導入に関わるトラブルである。

図 地方都市の病院が陥ったシステム開発トラブル
パッケージを使った刷新で追加開発費が膨張
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病院情報システムの刷新を企画

 地方都市にあるP病院は、病院業務の効率化を図るために病院情報システムの刷新を計画した。現行システムは地元のソフトウエアハウスを使ってメインフレーム上に開発した個別システムである。

 病院情報システムの担当者は、パッケージを利用して新システムを構築することにした。業務の内容や流れは他の病院と大差ないだろうとの判断だ。近隣のいくつかの病院がオフコンのパッケージを使って安く開発していたという話を聞いていたためでもあった。

 国産パッケージベンダー4社に見積りを依頼したところ、利用者数に基づくパッケージのライセンス費はいずれもほぼ同じだったが、想定されるカスタマイズの工数に大きな差が出た。

 傾向としては、大手ベンダーが提供するパッケージはカスタマイズ工数が少なく、中堅ベンダーのパッケージは工数が大きかった。ただし、中堅企業のSE単価は安く、総額でみればそれほど変わりはない。

 大手ベンダーの説明によれば、同社はパッケージの導入経験が豊富で、どこまでカスタマイズが増えるかを熟知しているという。加えて、パッケージが想定する業務と現行業務との差異を調べる「フィットギャップ分析」をしてから費用を提示するので、その費用を見てから可否を判断してもいいとのことだった。

 P病院の担当者は「さすが大手」とすっかり信用し、この大手ベンダーの提案を採用してフィットギャップ分析を実施した。

 大手ベンダーのSEが3カ月かけてフィットギャップ分析をしたところ、意外な結果が出た。P病院は各診療科によって業務が微妙に異なり、このままパッケージを導入すると現場は混乱する。業務分析からやり直して要件定義書を作成した方がいいというのだ。

 大手ベンダーからの提案を受け、P病院は要件定義を作成する作業をこのベンダーに発注した。

 病院の業務に関わる関係者は非常に多い。医師、検査技師、看護師を中心に、患者や出入り業者が加わる。内科、外科、消化器科、神経科など多くの診療科があり、検査機関も関係する。

 さらに業務の進め方は個人間でばらつきが大きい。診断に関わる記録の取り方一つとっても統一されていない。これらの業務を分析して要件定義書を作る作業は、想定をはるかに超えて難航した。要件定義までの費用だけでも当初提案の追加費用1億円を超えた。

 出来上がった要件定義書を基にフィットギャップ分析をした結果、パッケージの適用率は60%ほどと低く、残りはカスタマイズかアドオンするしかないとのことだった。想定される追加費用は当初予定の3倍に膨れ上がっていた。

 それでも大手ベンダーは「パッケージをベースとすれば、スクラッチ開発よりも開発期間を大幅に短縮できる」と主張し、予定通りパッケージのカスタマイズによる導入を推奨した。P病院も、開発期間を短縮できるならと提案を受け入れた。

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