現在のサプライチェーンでは、川上から川下にわたって関与する多数の事業者間で情報の非対称性がある。それによって劣悪な商品しか取引が成立しなくなってしまうという「逆選択」やモラルハザード、一連の工程の中でのモノの管理や真正性を担保することなどが課題であるとされてきた。

 サプライチェーンの各時点において流通するモノの情報を、逐次、各工程における管理者がブロックチェーンに接続されたシステムに入力することで、各工程の管理者、関係者が閲覧する環境が構築され、どの時点でも、モノの情報を参照できる。これによって、川上と川下の情報の非対称性が減じていくと期待されている。

 また、これらの流通データは、ブロックチェーンの性質上改ざんが難しく、また情報をトラッキングすることが可能なため、データと結びついたモノそのものの真正性の担保が容易となる。

 これにより、製造・流通工程での欠品や、贋物が流れ込む可能性を低減させることができるため、貴金属や薬品など、贋物が流通しやすい製品のサプライチェーンへの適用が期待されている。

Illustration by Yumiko Comukai
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 さらには、ブロックチェーンで一連の工程を管理し、各工程に要したコストをデータ化して管理することで、「どの工程で」「どれだけの製品に」「どれだけのコストをかけたか」の管理が容易になる。これにより、サプライチェーン上の会計管理が容易になる可能性がある。

 各サプライチェーン独自のトークンを法定通貨の代わりに用い、トークンと法定通貨の交換を担保する企業が強固な地位を持っていれば、取引相手の破綻などによる支払い不履行のリスク(カウンターパーティリスク)を低減できる可能性もあるだろう。

 将来的には、サプライチェーンの川上から川下にいたるまで情報が一気通貫して管理され、情報の非対称性がなくなることにより、結果的に、多くの流通が活性化していく。

 そのため、流通を促し、管理する、既存の大規模な中間流通事業者の存在意義が薄れ、究極的には不要となる可能性がある。

出典:「この1冊でまるごとわかる ブロックチェーン&ビットコイン」「日経ビッグデータ」「日経FinTech」共同編集(2016年12月24日発行) p.13
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