5Gの課題としては次の4点が挙げられる。第1に個人の需要を開拓できるか、第2に「準ミリ波」などの高周波技術を端末に低コストで搭載できるか、第3に投資に見合う経済効果が確実に得られるか、第4に世界中で同じ周波数が使えるか──である。

図●5Gの導入・普及に向けた4つの課題
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 第1の課題は、個人ユーザーが毎秒10ギガビットもの超高速通信を生かせる用途が無いのが現状だ。

 携帯電話大手は「用途の開拓こそ重要だ」として、多くのユーザー企業に声をかけ、5Gの使い方を探る実証実験に力を入れている。自動車や警備、エンターテインメント産業、製造業などがその一例だ。「様々な業種の企業から提案やアイデアをもらい、企業の関心は高い」(NTTドコモの中村室長)との声に代表されるように、業務活用は大きな潜在力を持つ。

 一方で超高速通信を必要とする個人の活用シーンが描けていない。例えば4K映像の配信サービスは毎秒25メガ~80メガビットの帯域で十分であり、4G(LTE)で既に提供されている。5Gのけん引役としては力不足だ。

 3Gは「iモード」「写メール」などのヒットサービスがデータ通信の需要を生み出し、4Gはスマホや動画サービスが高速通信への需要をさらに引き上げた。5Gで同じような個人向けの「キラーサービス」が現れるかは未知数だ。

 2番目の課題は、28ギガヘルツ帯など新たな周波数を使うことに伴うものだ。NR(49ページ参照)の基地局は都市部に密に設置される見通しだが、電波が届きにくい特性は不利に働く。高周波を増幅する半導体は一般的なシリコンでなくガリウムヒ素を材料にするなど、通信端末に搭載するアンテナや半導体に求められる技術は従来と大きく異なる。これらを小型化・低価格化する研究開発は急速に進んでいるとはいえ、まだ発展途上にある。当初のNR対応の通信端末は高価かつ大型となり、販売が伸び悩む恐れがある。

 第3の課題は、投資に見合う経済効果を呼び起こせるかである。5GでNR対応基地局を整備すると、設置箇所は大幅に増える見通しだ。その対策として、通信機器メーカーはNR基地局を低コストで整備できる技術開発を進めている。NTTドコモは「携帯電話の設備投資は技術革新などにより緩やかに減っている。5Gでも投資を急増させず整備できる」(5G推進室の中村武宏室長)とみる。ただし5Gへの投資を継続するには着実は普及が必要と言える。

 第4の課題は、5Gの周波数は国ごとに割り当てが異なる可能性があり、国際ローミングの障壁になる懸念だ。5Gで当初使われる周波数は2019年の国際会議で確定する見通しだ。

出典:日経コンピュータ 2017年9月14日号 p.54
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