PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)ガイド第6版は、プロジェクトマネジャーの役割を改めて定義した。第3章を「プロジェクトマネジャーの役割」とし、プロジェクトマネジャーの定義や活動の範囲、求められる3つのコンピテンシー(能力)について記述している。

 プロジェクトマネジャーに求められる3つの能力とは「(1)プロジェクトマネジメントの技術」「(2)戦略的及びビジネスのマネジメント」「(3)リーダーシップ」である。米PMI(Project Management Institute)はこれらの能力を「PMIタレントトライアングル」と呼んでいる。

プロジェクトマネジャーに求められる3つの能力
出所:米Project Management Institute(能力名は日本語に訳した)
[画像のクリックで拡大表示]

 (1)プロジェクトマネジメントの技術は、10の知識エリアにおける管理項目の全体最適を守り、プロジェクトを進めるための技術のこと。プロジェクトマネジャーの基本能力といえる。(2)の戦略的及びビジネスのマネジメントは、誤解を恐れずに分かりやすくいえば、経営戦略やビジネスを理解する能力のことだ。(3)のリーダーシップでは、アジャイル型のプロジェクトで特に求められるサーバントリーダーシップなどを紹介する。

 特に注目したいのは、(2)の戦略的及びビジネスのマネジメントである。最近のプロジェクトにおいて重要性を増しているからだ。

 一昔前であれば、「QCD(品質・コスト・納期)」の目標を満たして成果物を作り上げれば、プロジェクトマネジャーは相応の評価を受けた。そんな時代は、(1)の技術があれば十分だった。しかし最近の複雑で競争が激しいビジネス状況においては、「決められたことを守ってモノを作ればよい」というわけにはいかなくなった。プロジェクト期間中にビジネス環境が変化し、当初の計画通りにQCDを守って成果物を作り上げても、発注者の満足につながらないケースが目に付くようになったのだ。

 従って現在のプロジェクトでは、ビジネス目標を達成する視点に立つことが求められる。さらに、プロジェクトをビジネスと捉えて運営する姿勢が重要である。このような能力を、PMBOKガイド第6版では戦略的及びビジネスのマネジメントと位置付けている。

プロジェクトを投資と捉える

 もっとも、「ビジネス目標を達成する視点」「プロジェクトをビジネスと捉えて運営する姿勢」などと言われても、ピンと来ないかもしれない。もう少し理解しやすくするために、そもそもプロジェクトがどのように立ち上がるのかを整理して解説する。

 まず、経営陣やビジネスアナリストが、組織のあるべき姿やビジネスの中長期目標を明確にする。そのうえで、あるべき姿やビジネスの目標と現実とのギャップを分析し、そのギャップを解消する解決策の案をいくつか出す。それらの案に優先順位を付け、優先度の高いものからプロジェクトを立ち上げる。そして、プロジェクトの運営をプロジェクトマネジャーに託す。

 このように流れを整理してみると、プロジェクトの本来の目的は、ビジネス目標を達成することだと分かる。プロジェクトマネジャーは、何のビジネス目標を達成するためのプロジェクトなのかを明確に理解しなければならない。さらにビジネス目標を達成するためであれば、たとえプロジェクト期間中であっても、環境の変化に寛容でなくてはならないことも分かる。これらが、ビジネス目標を達成する視点である。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経SYSTEMS」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は申し込み初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら