米国の携帯電話は主力のポストペイド(料金後払い)加入者の増加が頭打ちで、市場の飽和が鮮明となってきた。VerizonとAT&Tの大手2社は映像サービスを新たな成長領域と位置付け、映像コンテンツやモバイル広告などの関連技術を持つ企業の買収を積極的に進めている。CATVや衛星放送といった既存サービス、台頭著しいOTT(Over The Top)ビデオを含め、映像市場を巡る競争が一段と激しくなってきた。

VerizonとAT&Tが大型買収で攻勢

 携帯電話最大手のVerizonは2015年6月、広告プラットフォームやデジタルコンテンツを保有するAOLを買収。さらに2017年7月には米Yahooのコンテンツやメールサービスなどの中核事業を買収し、AOLの事業と組み合わせたメディア系の新会社「Oath」を設立した。同社の傘下には、「HuffPost」「Yahoo Sports」「Tumblr」といった50以上のブランドが名を連ね、全世界のユーザー数は10億人以上に上る。

 携帯電話2位のAT&Tは2015年7月、衛星放送大手のDIRECTVを買収し、米国で約2500万人の加入者を擁する多チャンネルビデオの最大手となった。さらに2016年10月にはメディア大手のTime Warnerを854億ドルで買収することに合意した。現在、米司法省や関係各国の規制当局による審査が進んでおり、AT&Tは2017年末までの完了を見込んでいる。

 Time Warnerは米国最大規模のメディア企業。傘下には、映画やビデオ、ゲームなどのエンターテインメント事業を手掛ける「Warner Bros.」をはじめ、ケーブルテレビ局「HBO」、「CNN」や「Cartoon Network」といったケーブルチャンネルがある。AT&TはTime Warnerの買収により、全米の3億1500万人以上をカバーするモバイルネットワークを通じてブロードバンドと映像のバンドルサービスを提供し、全米レベルでCATV事業者と競争することを考えている。

OTTビデオに対抗して「v-MVPD」が登場

 映像サービスを巡っては、NetflixやHuluをはじめとしたOTTビデオサービスに対抗する動きも広がってきた。

 衛星放送事業者のDISH Networkは2015年2月、ブロードバンド回線を活用したOTT多チャンネルビデオサービス「Sling TV」の提供を開始。2016年11月にはAT&TがDIRECTVのコンテンツを活用した「DIRECTV NOW」を立ち上げた。

 これらは従来のCATVや衛星放送のように複数のチャンネルをバンドルした月決めのサービスだが、チャンネル数は30~100程度と少なめ。ただ、料金は月20~70ドル程度と割安に設定してあり、テレビだけでなく、スマートフォンやタブレット、パソコンなど様々なデバイスで視聴できる。

各種ビデオサービスの主な違い
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 米国のメディアやアナリストはこうしたサービスを提供する事業者を、伝統的な多チャンネルビデオ事業者(MVPD:Multichannel Video Programming Distributor)と区別して「virtual MVPD(v-MVPD)」と呼んでいる。

Time Warner▲
CATV事業者のTime Warner Cable(現:Charter Communications)は2009年にTime Warnerからスピンオフされ、それ以降、両社の間に資本関係はない。

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