脱キャリア戦略を掲げ、米国の携帯電話市場でユニークなサービスやプロモーションを次々と打ち出してきたT-Mobile US。業界3位に浮上して競争をリードするが、「二強二弱」の構図は依然として変わらない。真の意味で二強に対抗できる存在となるには一段の飛躍が必要であり、近い将来に起こるであろう米国の業界再編で最大の注目となりそうである。

顧客基盤とネットワークの確保に一定のメド

 T-Mobileは2013年2月に打ち出した「Un-carrier」戦略により、見事な躍進を遂げた。第1弾として2年契約の縛りと端末購入補助金のない料金プラン「Simple Choice Plan」を投入した直後の2013年4~6月期決算では、純減が続いていたポストペイド(料金後払い)の加入者が純増に反転。その後も加入者は順調に増え続け、2015年1~3月期決算では競合他社(Verizon Wireless、AT&T、Sprint)がポストペイドで純減に落ち込む中、同社だけは約99万件の純増を達成した。

 同社はついに2015年4~6月期決算でSprintの加入者数を逆転。以降は業界3位の地位を維持している。米コンシューマーレポートが2015年12月に発表した携帯電話事業者のランキングでも顧客サポートやバリュー(価値)が高く評価され、それまでトップに君臨してきたVerizonを抜いて総合得点で1位を獲得した。

 米国の携帯電話市場はT-MobileのUn-carrier戦略を契機に競争が活性化し、顧客は革新的な料金プランやサービスの恩恵を受けられるようになった。スマートフォンの早期買い替えオプションをはじめ、端末購入補助金なしの料金プラン、音声通話/SMS/データ通信がオール無制限の料金プランなどが代表例。T-Mobileの導入をきっかけにVerizonやAT&Tが追随し、今では業界のスタンダードとなった施策がいくつもある。

音声通話/SMS/データ通信がオール無制限の新料金プラン「T-Mobile ONE」を発表するT-Mobile USのJohn Legere CEO
出所:T-Mobile
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 T-MobileはUn-carrier戦略とJohn Legere CEO(最高経営責任者)の派手な言動で注目を集め、顧客基盤の拡大に成功する一方、ネットワークの増強にも注力している。AT&Tとの合併不成立に伴う違約金の一部として同社から譲渡された周波数のほか、2013年5月に買収したMetroPCSの周波数を活用して全米規模のLTEネットワークを急ピッチで構築。結果、「通信料金は安いが、ネットワークの品質はひどい」というこれまでの評価も徐々に改善しつつある。

 さらにT-Mobileは2017年3月末に終了した600MHz帯周波数のオークションに約80億ドルを投じ、トップ落札者となった。5月初めに発表した「5G」(第5世代移動通信システム)の展開計画によると、600MHz帯を含めた複数の周波数帯を使い、2020年までにモバイル5Gの全米カバレッジを実現するとの野心的な目標を掲げる。

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