米国の携帯電話市場では、全国事業者と呼ばれるVerizon Wireless、AT&T、T-Mobile US、Sprintの大手4社が活発な競争を展開している。ここ数年、競争をけん引しているのが、Deutsche Telekom(DT)傘下のT-Mobileだ。米国では、同社がソフトバンクグループ子会社のSprintと合併するとの観測も出ている。

 T-Mobileはこれまで、大手4社の中で長年にわたって最下位の地位に甘んじ、たびたび買収のターゲットとされてきた。しかし、2013年に「Un-carrier」(脱キャリア)と呼ぶ戦略を始めてからは競合他社を上回るペースで加入者を伸ばし、2015年半ばにはSprintを抜いて業界3位に浮上した。以下では、T-Mobile躍進の原動力を分析する。

次々に施策を打ち出して業界3位に浮上

 T-MobileがUn-carrier戦略を始める前の状況を振り返ると、米国ではスマートフォンの普及が拡大する真っただ中。増加し続けるデータトラフィックを支えるべく、LTEネットワークの早期展開と、そのために必要な周波数の確保が喫緊の課題となっていた。一方、大手4社の競争状況を見ると、VerizonとAT&Tの上位2社で全体の7割近くの加入者シェアを占め、下位のSprintやT-Mobileとの差は年々拡大していた。

 当時、業界4位だったT-Mobileは十分な周波数を保有しないばかりか、追加の資本投下も見込めず、単独によるLTEネットワークの敷設は困難な状況だった。親会社のDeutsche Telekomはパートナー探しを進め、2011年3月には業界2位のAT&Tによる買収に合意した。だが、携帯電話市場の寡占化を懸念する米連邦通信委員会(FCC)と米司法省の強い反対を受け、同年12月に合併の合意を解消した。

 当面は単独による事業継続を余儀なくされたT-Mobileは2013年2月、「Un-carrier」戦略で脱キャリア(通信事業者)を宣言。従来の慣行や常識を打ち破ることでVerizonやAT&Tに対抗し、顧客基盤の拡大を目指す方針を打ち出した。

 同年3月には、「複雑な料金プランから顧客を解放する」として、第1弾の施策を発表。2年契約の縛りと端末購入補助金のない「Simple Choice Plan」に料金プランを一本化し、既存のプランを廃止した。

Un-carrier戦略の第1弾の施策を発表するT-Mobile USのJohn Legere CEO(2013年3月、un-leashは「束縛を解く」の意)
出所:T-Mobile US
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