パブリッククラウド(以下、クラウド)導入を阻む障壁の一つとして前回はセキュリティへの懸念を取り上げ、その払拭法を紹介した。今回はコストに対する懐疑的な見方をどう覆すかを、先行ユーザーの事例を中心に解説する。重要なのは、コストについての正しい判断材料を提示することだ。

 経営層がクラウドを導入すべきかどうかを判断するうえで、コストは極めて大きな材料になる。クラウドを導入した場合と、従来のオンプレミス(自社所有)環境を維持するといった場合とで、クラウド移行に掛かる初期費用、運用費用、さらにはバランスシートがどう変わるのかを比較して判断を下す。

 ここで問題になるのは、クラウド導入によってコストが圧倒的に下がるケースがまれなことだ。クラウドの利用料が安くても、全面移行するまではオンプレミスとの二重運用になり、コストがかさむ。さらに、オンプレミスでコスト削減の取り組みを進めているほど、クラウド導入によるコスト削減の余地が小さくなる。

 それでも工夫すべき点がある。「オンプレミスには“隠れたコスト”がある。これを俎上(そじょう)に載せて、クラウド導入を提案すべき」。こう指摘するのは、エレベーター大手、フジテックの友岡賢二常務執行役員情報システム部長だ。

フジテックの友岡賢二常務執行役員情報システム部長
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 同社は業務システムのインフラとしてAmazon Web Services(AWS)を採用しており、既に190台以上の仮想マシンがAWS上で稼働中だ。

 ファーストリテイリングの業務情報システム部部長だった友岡氏が転職して、フジテックの情報システム部長に就任したのは2014年4月のこと。当時、フジテックでは自社のデータセンターで業務システムを稼働させていた。建物の堅牢性に問題があり別のデータセンターに移ることが決まりかけていたが、友岡氏が社内を説得してAWSへの移行に方針転換させた。

自社データセンターの設備費用を勘案する

 その際に友岡氏は、自社データセンターの隠れたコストに着目し、それを含めたコスト比較を示した。ここでいう隠れたコストとは、データセンターの土地・建物、UPS(無停電電源装置)、空調設備、防犯設備などの費用だ。これらのコストは一般に情報システムの経費として計上されず、オンプレミスのコストが実態より安く見えることがある。友岡氏は「クラウドとオンプミスとのコスト比較では、情報システムの費目に限定せず、関係するコストを洗い出して比べることが重要だ」と訴える。

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