パブリッククラウドのメリットを最大限引き出すのは自社開発の企業だ――。2017年9月末をめどに完全クラウド化を実現する東急ハンズはそう考える。2008年からシステム開発を自力で進めたことが、初心者集団での完全クラウド化を可能にした。

 東急ハンズが完全クラウド化に至ったきっかけは、2008年にさかのぼる。当時、東急ハンズの社内は大きく揺れていた。それまで各店舗が独自に進めていた商品の仕入れを、本部からの一括発注に切り替える事業変革を進めていたからだ。新しい仕入れ方法は「本部MD(マーチャンダイジング)制」と呼ばれた。

 一部の店舗で先行して本部MD制を開始したものの、うまく機能しなかった。同時に導入したMDシステムに不具合があっただけでなく、新しい業務の進め方が洗練されていなかったためだ。このため、他店舗への本部MD制の展開は滞っていた。

 当時の経営トップは外部の専門家の登用で事態を打開しようと考え、アクセンチュアで流通業を担当していた長谷川秀樹氏に声を掛けた。このとき長谷川氏は「ITコンサルタントは結局、外部の人間。企業の中に入って、自分の責任とリスクで事業変革を進めてみたい」と考えていた。こうして2008年5月、長谷川氏はIT物流企画部の部長として東急ハンズに転職した。

写真●東急ハンズの長谷川秀樹執行役員オムニチャネル推進部長
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初心者集団で自社開発

 「結局、全て作り直すしかない」。入社してすぐ、長谷川氏は全社のシステム構成図を見ながらこう考えた。

 長谷川氏に託された最も大きなミッションは本部MD制の導入とMDシステムの展開。ただ、その他の社内システムも問題が山積みだった。機能が重複したシステムの乱立や、老朽化したシステムの存在を目の当たりにした。

 機能が重複していたシステムとしては、メール/スケジュール管理システムが挙げられる。当時、米マイクロソフトのOutlook、サイボウズ製グループウエア、独自開発の社内ポータルの三つがあった。

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