前回に続き、 開発失敗事例の分析を紹介する。

 要件定義で失敗する割合が増える一方で、開発の遅延による稼働延期の期間は短縮傾向にあることが分かった。1980年代と90年代、2000年以降の162件について開発延期期間の平均を比較した結果、半年未満の割合が1980年代は30.8%だったのに対し、2000年以降は41.3%に増えていた。

 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査報告書2017」でも、以前よりシステム開発の工期を順守する傾向が見られた。2016年度では、100人月未満の小規模なシステム開発で85.7%、500人月以上の大規模な開発でも55.5%が「予定通り完了」もしくは「ある程度は予定通り完了」したとしている。2004年度から2008年度の工期順守状況を平均した結果では、100人月未満の開発と500人月以上の開発でそれぞれ工期を守った割合は79.2%と48.0%だったことからすると、この10年ほどで改善がみられた。

 工期の順守状況が改善している理由について、JUASの報告書では工期の延期を問題視する意識が高まっていることを挙げる。背景には開発体制や時代の変化がありそうだ。

 1990年代までは単一のベンダーがメインフレーム上でシステムを開発する事例が多かった。開発が遅れても、影響が他のシステム開発に波及することは少なかった。

 一方でパッケージソフトを利用したオープン系の開発が一般的になった2000年代以降は、パッケージ製品の開発元、システム構築企業、サーバーメーカーなど携わるITベンダーが増えている。情報サービス産業協会(JISA)プロジェクト健全性評価研究会の早乙女真幹事は「プロジェクトを指揮するITベンダーは、複数のベンダーを制御してベンダー同士で合意を形成したり、スケジュールを調整したりする必要がある」と述べる。「トラブルの影響範囲が拡大したことで、品質の悪化や安易な工期の延期はITベンダーにとって訴訟リスクになりかねない」と続ける。

 開発スケジュールのズレが開発体制全体に影響を及ぼすようになったため、工期順守の優先順位が高まっていると考えられる。プロジェクト管理手法の進歩や管理ツールの普及と合わせ、こうした背景が稼働延期期間の短縮につながった可能性がある。ITの活用範囲が広がり、稼働を延期すると顧客サービスに影響が及びやすくなった点も関係しそうだ。

稼働延期期間は短縮傾向
図●開発失敗による稼働延期期間の割合(年代別)
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