「なぜ?」を繰り返しながら、問題の原因を追究する「なぜなぜ分析」。同じヒューマンエラーを二度と起こさないようにする目的で、多くの企業が再発防止策の立案に活用している手法だ。私はなぜなぜ分析を独自に体系化し、企業の指導に日々駆け回っている。

 今回は前回とは別な側面から、なぜなぜ分析で非常に大切な言葉使い(「なぜ?」の出し方)について考えてみたい。

 まずは下の図に示したなぜなぜ分析を見てほしい。注目してもらいたいのは「なぜ3」から「なぜ6」までの流れだ。

図●改善を妨げる、なぜなぜ分析の例
(出所:マネジメント・ダイナミクス)
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 「なぜ3:太郎が会社名を確認しなかった」のはなぜか。それは「なぜ4:太郎が確認するのを怠った」から。では、「なぜ4:確認するのを怠った」のはなぜか。それは「なぜ5:大事な書類を作成しているという意識が欠けていた」から。

個人に起因する「なぜ?」は意味なし

 「なぜ5:意識が欠けていた」のはなぜか。それは「なぜ6:大事な書類であることを教育されていなかった」から。結果、今回のミスの再発防止策は社員教育プログラムや部下の指導方法の見直しに決まった。一見、何の問題もないように思えるが、なぜなぜ分析としては致命的な過ちを犯している。

 この例の場合、社員教育や指導方法の改善だけで、本当にミスがなくなるのだろうか。何も対策をしないよりはマシかもしれないが、社員教育や指導方法の変更だけでは到底、ミスはなくならないだろう。というのも、この例では途中から、太郎さん個人のなぜなぜ分析になってしまっており、ほかの人には必ずしも当てはまらないからだ。

 ミスした当事者個人の問題(ここでは「怠った」「意識が欠けていた」)を掘り下げたところで、組織としての根本的な問題解決にはつながらないのは言うまでもないことだ。当事者が「寝不足だったから」「疲れていたから」「ボッーとしていたから」「体調が悪かったから」といった「なぜ?」を書くのも全て同じである。

 こうした個人に起因する「なぜ?」をいくら書き出しても、組織としての原因追究にはつながらない。なぜなぜ分析で個人に起因する「なぜ?」の表現が出てきたら、リーダーや管理者はそこで「待った!」をかける必要がある。

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