3カ月で1万1000人超――。2017年3~5月に運転免許の更新などを迎えた75歳以上のドライバーのうち、「認知症の疑いあり」と診断された人数だ。

 高齢者の運転を巡っては、高速道路の逆走やアクセルとブレーキの踏み間違い、シフトレバーの操作ミスなどによる事故が頻発している。テレビのニュースなどを見たことがある人は少なくないだろう。とはいえ、生活の足として自家用車を使う高齢者も多く、特に都心部以外ではそう簡単に運転をやめられない。配偶者や子供などが心配して運転をやめさせようとしても、本人が嫌がるケースもある。

 オリックス自動車が2017年2月に始めた「Ever Drive」はそうした高齢ドライバーをIoTで見守るサービスだ。第3世代携帯電話(3G)とGPSを内蔵した車載機を高齢者の自家用車に装着。GPSで取得した走行ルートの履歴と自動車の速度データを記録し、家族がスマートフォンやPCで参照できるようにした。自動車を持つ人なら誰でも利用できるサービスだ。料金は月2980円(税別)だ。

オリックス自動車が提供する「Ever Drive」の仕組み
運転状況を見守り、異常にいち早く気づく(スマホ画像提供:オリックス自動車)
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 通常はエンジンを切った際に履歴をまとめてサーバーに転送して通信パケットを節約するが、危険走行時は家族にメールで随時連絡する。危険運転と判断するのは時速100km超の高速走行や、急加速・急ブレーキ、2時間以上の長時間運転、午後6時以降の夜間運転などだ。家族は危険運転の頻度を月次で比較して、「急な加減速が増えてきた」など認知症の予兆を判断するのに役立てられる。

 自動車の現在地も検索可能だ。スマホやPCの画面では、行程ごとの走行経路を地図上で確認できる。高齢者が徘徊運転していないか、危険運転がどこで発生していたかを把握しやすい。

 オリックス自動車の竹村成史リスクコンサルティング部長は「高齢者とその子供が離れて暮らしていると、子供は親の認知症の兆候に気づかない。特に徘徊運転は気づきにくい」と指摘する。

オリックス自動車 リスクコンサルティング部の竹村成史部長(左)と中村健太郎課長
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 危険運転の兆候をIoTで見える化すれば、家族はルート履歴を見て、それが普段の生活圏での正常な運転なのか、旅行に出かけているのか、あるいは同じ場所をぐるぐる回るなど徘徊運転が疑われる状況なのかを判断できる。

 「子供が異変に気づきやすくなり、親に小まめに連絡できる。親子の会話の頻度もぐっと上がるのでは」と竹村部長は期待を寄せる。