様々な取り組みが進みつつあるアグリテックだが、現状では個々の企業や農業従事者による「点」の分散にとどまる。これを日本の農業全体の活性化につながる「面」の動きにどう発展させるかが、喫緊の課題として浮上している。日本の農業が切羽詰まった状況に置かれているからだ。

 農林水産省によると、2016年の日本の農業従事者の平均年齢は66.8歳で70代に迫る勢いだ。就業人口は192万2000人。現行の統計基準となった1995年以降、初めて200万人を割り込んだ。高齢化とともに耕作放棄地が増えており、農村の維持が難しい状況が現実化している。

 農林水産省の西郷正道技術総括審議官は「日本の農業はこれまで熟練農家の勘と経験にすがっていた」と話す。日本の農作物は安全性や品質が高いことで世界的に知られるが、それを支えるのは徒弟制による技術の伝承だ。今のままでは人材育成のペースが上がらず、日本の農業はどんどん先細っていく。

 解決策として期待されているのがアグリテックだ。人工知能(AI)やIoTを生かして、高い生産技術を持つ熟練農家の様々なデータを収集・蓄積してノウハウをシステム化する。その結果を農作業の効率化や省人化に生かすとともに人材育成に役立てるわけだ。

 それにはITのさらなる低価格化や使い勝手の向上が必要なのは言うまでもない。さらに大きな難問に立ち向かう必要がある。農業データの仕様の共通化だ。

 農業を支えるシステムは大きく五つある。作業の進捗や育成の状況を管理する「生産管理システム」、作業量や資材使用量をモバイル機器などで記録する「生産記録システム」、温度や湿度、二酸化炭素濃度、日照量などを計測する「環境モニタリングシステム」、環境計測データを基に適切な環境を制御する「複合環境制御システム」、農機を通じて環境や生育データを取得して作業に生かす「農業機械連携システム」である。農業生産者の規模や用途に応じて、これらを取捨選択して使うことになる。

図●アグリテックを支えるシステムの分類
生産管理や環境制御など5分野でITを活用
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 現状ではITベンダーや農機メーカーが異なると、システム間でデータの連携が困難なケースがほとんどだ。これが「点」の取り組みを「面」に発展させるうえで大きな障害となる。農業の危機が叫ばれる今こそ、データの共通化によりシステムを密に連携しやすくして、農家同士でノウハウを融通したり、農地運営を共同で進められるようにしたりする仕組みが求められる。

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