一口にデジタルシフトといっても、業種・業態やそれまでの取り組みなどで施策は異なる。ユーザー企業の多くに共通する代表的なデジタルシフトに注目し、IT主導の実践法を見よう。

 利益増に直結するのが、(1)顧客とのエンゲージメントの強化である。これを効果的に進めるために、(2)データ分析にこれまで以上に注力する必要がある。新たなサービスを立ち上げるなど試行錯誤による開発が増えることから、(3)開発効率アップにも取り組みたい。

チャネルにITを掛け合わせる

 建築材料・住宅設備機器最大手のLIXILは、エンゲージメント強化に向けて、従来のIT部門とは別に「デジタルテクノロジーセンター」を立ち上げた。「販売代理店やビルダー(建築会社や工務店など)が間に入るので、どうしてもLIXILから顧客までの距離が遠い。顧客とダイレクトに接する機会を増やしエンゲージメントを高める」。マーケティング本部の安井卓デジタルテクノロジーセンター長は狙いを話す。

チャネルのデジタル化で顧客とのエンゲージメントを強化するLIXIL
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 顧客とLIXILを結ぶチャネルは既にある。代表的なのはWebサイト、ショールーム、コールセンターの3つで、それぞれにシステムも用意してある。これらチャネルにデジタルを掛け合わせてエンゲージメントを高めるのが同社の強化策だ。

 中でも、全国90カ所を越えるショールームは重要度が高い。「キッチンやバスをWebサイトで見てそのまま買う人は少ない。商品を確認しようとショールームを訪れる人への対応の良しあしがブランド力につながる」(安井センター長)。ショールームへの来訪者は多く、混んでいると相談までに何十分も顧客を待たせるケースがある。

 混雑緩和に向けて2017年10月に試したのが、タブレットを使ったリモート接客だ。顧客がアプリをタップすると遠隔にいるオペレーターにつながりテレビ電話で会話する仕組みを、一部のショールームに導入した。ところが、「通話ボタンを押してくれない」「ネット接続が切れてあきらめる」など、顧客の利用は決して芳しいものではなかった。

 安井センター長は「テストで素早くやってみて、顧客の反応から、イケてるやり方なのか、イケてなければ何がダメなのかを確認して次につなげる」と、デジタルシフトを試行錯誤で進める考えだ。

過去30年分のデータ分析可能に

 エンゲージメントの最適化を図るには、これまで以上に多くのデータを集め、分析する必要がある。全社横断のデータ分析プラットフォーム「KOMPAS」を2017年4月に本稼働させたのがコーセーだ。事業部門が持っていた6システムのデータウエアハウス(DWH)の一本化をIT部門主導で進め、AWS(Amazon Web Services)のDWH「Amazon Redshift」およびBIツール「SAP BusinessObjects Business Intelligence」を組み合わせた基盤に移行した。

データ分析プラットフォーム「KOMPAS」を構築しマーケティングを支援するコーセー
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 プロジェクトを率いるコーセーの小椋敦子情報統括部長は「データをどう生かすかはマーケティングのプロに任せるとして、別の切り口で分析したいといった新たなニーズにすぐ応えられるようにデータ基盤を整備し、デジタルマーケティングに貢献したい」と意気込む。

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