日経BP社は2015年3月、「第10回クラウドランキング」を発表した。クラウドベンダー・イメージ調査を基に、15社をベストブランドとして選出している。今回は上位5社の総合スコアが接近。競争が一段と激化した。日本マイクロソフトや日本IBMといった総合ITベンダーが、グーグルやセールスフォース・ドットコムといったクラウド専業ベンダーを追い上げている。

 クラウドランキングは、クラウド関連事業を行うITベンダー(以下、クラウド関連企業)に対するクラウドベンダー・イメージ調査を基に選出する「ベストブランド」と、クラウド関連サービスをその内容や実績などで評価して選出する「ベストサービス」の2つの調査で構成している。ここでは、ベストブランドの結果を紹介しよう。

 クラウドベンダー・イメージ調査では、企業向けクラウドサービスやクラウドサービス関連製品といったクラウド関連事業を展開するITベンダー200社について、ビジネスパーソンへアンケート調査を行っている。「認知度」「信頼性」「技術力」「実績」「提案力」「マーケティング力」の6分野にわたるイメージを尋ね、その結果を基に総合スコアを算出。総合スコアが62.5以上と評価が高い企業をベストブランドとして選出する。

 第10回では、ベストブランドとして、グーグル、セールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)、日本IBM、日本マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム(以下、アマゾン)など15社を選出した(表1)。ベストブランドが15社になったのは第7回以来で、ヤフーが初めて選出された。

表1●今回「ベストブランド」に選出されたITベンダー
* 総合スコアの小数点2以下まで見て順位を付けた。総合スコアが62.5以上を「ベストブランド」として選出している
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 今回の最大の特徴は、ベストブランド上位5社の総合スコアがこれまでになく接近したことだ(図1)。現在の調査方式になった第2回はセールスフォース (総合スコア91.7)とアマゾン(同72.0)に19.7ポイントの差があった。それが次第に縮小し、第10回における1位の総合スコア(グーグル 78.6)と5位の総合スコア(アマゾン 74.4)の差は4.2ポイントと、第2回の差の約5分の1になっている。

図1●ベストブランド上位5社の総合スコアの変化
上位5社の総合スコアは調査を重ねるごとに接近している。なお、第1回は評価方法が異なるため、掲載していない。
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 第2回の調査を行ったのは2011年1月。第10回の調査を行った2014年12月~2015年1月までの約4年間で、上位5社のクラウド関連事業の競争は一段と激化したと感じる。

スコア接近、2つの理由

 上位5社は、グーグルとセールスフォース、アマゾンといったクラウドサービス専業のITベンダーと、日本マイクロソフト、日本IBMといったクラウドサービスとクラウド関連製品の両方を手掛けるITベンダーに分かれる。特に、グーグルとセールスフォースの2社は、ずっと1位と2位を占めてきた。グーグルは電子メールやスケジュール管理機能を備える「Google Apps」、セールスフォースはCRM(顧客関係管理)機能を軸とする「Salesforce1」を提供する。それぞれ幅広いビジネスパーソンが使うクラウドサービスであり、ブランド力もある。

 それに比べると、アマゾン、日本マイクロソフト、日本IBMの総合スコアは、グーグルまたはセールスフォースに比べて5ポイント以上の差が付いていた。アマゾンのクラウドサービス「Amazon Web Services」は、情報システム部門やSI事業者が利用者の中心で、ユーザー層が限られている。日本マイクロソフト、日本IBMはクラウド専業に比べて、やや遅れてクラウドサービスを本格展開した経緯がある。それらを踏まえると、第10回は予想以上に上位5社の総合スコアが接近したと感じる。

 スコア接近の理由は2つあると考えられる。

 まずはグーグルとセールスフォースの総合スコアの長期的な低下が続いたことだ。グーグルの総合スコアは第2回は89.6だった。それが第10回では78.6と11.0ポイント低下している。セールスフォースは第2回が91.7で第10回が78.1と13.6ポイント低下した。

 もう1つの理由としては、日本マイクロソフト、日本IBMといったクラウドサービスとクラウド関連製品の両方を手掛けるITベンダーの総合スコアが第2回からあまり低下していないことが挙げられる。特に第10回の総合スコアは、第9回に比べて増加した。日本マイクロソフトの第2回の総合スコアが78.5で第10回は同74.6。その差は3.9ポイントである。日本IBMの第2回の総合スコアは76.6で第10回が同75.7なので差は0.9ポイントだ。

 さらに、回答者の属性別に上位5社の総合スコアの変化を調べた。直近の5回分について、ユーザー企業回答者の総合スコアとITベンダー企業回答者の総合スコアを、全体の回答者とともにまとめた(図2)。

図2●ベストブランド上位5社の回答者属性別総合スコアの変化総合スコアが変化する傾向には5社それぞれで違いがある。それぞれ直近5回分を分析した。
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 グーグルは第7回まで総合スコアが低下していたが、第8回に増加。第9回および10回に再び低下している。これを回答者の属性別に見ると、第8回の増加を後押ししたのはユーザー企業の総合スコアであることが分かる。第8回のユーザー企業回答者の総合スコアは81.4で第7回の76.4に比べて5ポイント増えた。

 それに対して、ITベンダー企業回答者の総合スコアは継続的に低下している。グーグルは「Google Cloud Platform」をはじめとする情報システム部門およびITベンダー向けのクラウドサービスを拡充しているが、ITベンダー企業への評価には課題がある。

ユーザー企業からの評価が向上

 セールスフォースは第8回まで総合スコアが継続的に低下していたが、第9回に増加。第10回に低下した。同社においても第9回の増加を後押ししたのはユーザー企業の総合スコアだ。第9回は79.3で第8回の同73.0に比べて6.3ポイント増えた。それに対してITベンダー企業回答者の総合スコアは第9回まで継続的に下がり、第10回に0.5ポイント増加しただけである。同社は「Salesforce1」というブランドでクラウドサービスを総合的に展開しているが、認知度の向上などに一段と努力する必要がある。

 日本IBMは、第8回に総合スコアが増加したが第9回に低下し、第10回にまた増加するなど変動が続いていた。ただし、第8回はユーザー企業回答者の総合スコアが増加してITベンダー企業回答者の総合スコアが減少したのに対して、第10回ではユーザー企業回答者とITベンダー企業回答者両方の総合スコアが増加している。同社が展開する「IBM SoftLayer」などのクラウドサービスがユーザー企業とITベンダー企業の両方に認知されている様子が感じられる。

 日本マイクロソフトも日本IBMと似た傾向である。第8回に総合スコアが増加したときは、ユーザー企業回答者の総合スコアが増加し、ITベンダー企業回答者の総合スコアが減少した。それに対して第10回は、ユーザー企業回答者とITベンダー企業回答者両方の総合スコアが増加している。「Microsoft Azure」といった同社のクラウドサービスがユーザー企業とITベンダー企業の両方で評価されたと考えられる。

 アマゾンの総合スコアは5社のなかでは比較的安定しているといえよう。回答者別でも全体と同じ傾向が見られる。

クラウド事業に注力するヤフーが初選出

 今回のもう一つの特徴は、ヤフーが初選出となったことである。同社の総合スコアは64.1。分野別に見ると「認知度」(スコア70.9)と「マーケティング力」(同70.7)が比較的高い水準にある(図3)。

図3●ヤフーの分野別スコア
15社の平均値と比べると、「認知度」「マーケティング力」が比較的高く、「信頼性」「提案力」が低い傾向にある。
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 同社はレンタルサーバーサービス「Yahoo!ウェブホスティング」やオンラインストレージサービス「Yahoo!クラウドストレージ」を展開するほか、子会社などを通じて「Yahoo!ビッグデータインサイト」といったサービスを提供している。また、ヤフーは社内環境の構築・運用において、クラウド基盤構築ソフトウエア「OpenStack」を利用していること知られる。これらがクラウド関連事業を行うITベンダーとしてのビジネスパーソンのイメージを高めているようだ。

 ヤフーの「信頼性」「技術力」「提案力」分野のスコアは、ベストブランド15社の平均値に比べてやや低いものの、2015年2月には子会社を通じて法人向けクラウド基盤に進出するなどヤフーのクラウド関連事業には勢いがある。これからも注目できそうだ。

第10回クラウドランキング「ベストブランド」の概要

 ベストブランドを選出するための「クラウドベンダー・イメージ調査」は日経BP社と日経BPコンサルティングが、日経コンピュータやITproをはじめとする日経BP社のIT系メディア、および日経ビジネスオンライン読者、日経BPコンサルティングが所有する調査モニターを対象に実施した。2014年12月15日から2015年1月19日に、日経BPコンサルティングのインターネット調査システム「AIDA」を通じて回答を収集した。有効回答は5747件だった。有職者からの回答のみを有効とした。回答者の平均年齢は48.02歳。回答者の属性を下の図に示した。

 調査対象は200社。過去の調査で認知度が低かった企業は対象から外した。調査した200社のうち、その企業の存在自体を「非認知(知らない)」と答えた回答者の割合が66.7%未満だった143社を集計対象とした。認知度スコア、信頼性スコア、技術力スコア、実績スコアにそれぞれ2、提案力スコア、マーケティング力スコアにはそれぞれ1を加重した値の合計値を、平均値が50、標準偏差が10となるように標準化して総合スコアを算出した。総合スコア62.5以上のベンダーを、「ベストブランド」に選んだ。

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出典:日経情報ストラテジー 2015年5月号 pp.68-71
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。