Q.相手の話が漠然としていたり、逆に詳細すぎたりとあちこちに飛び、ついていけなくなることがあります。話を遮ってはいけないでしょうし、どうすればよいのでしょうか?

 ヒアリングはなかなか準備通りには進みませんよね。質問リストの順番通りに相手が答えてくれるとは限りませんし、たいていは話があちこちに飛びます。業務の実態を事細かに話したかと思えば、将来像のような漠然とした内容を話し出すこともあります。従ってあちこちに飛ぶ話を整理したり、漠然的で抽象的な話を具体化したりと、聞く側に工夫が求められます。

 話の整理や具体化をしながら円滑に聞くために役立つ考え方があります。「虫の目」「鳥の目」「魚の目」という三つの目です。虫の目は、物事に近付いて、その細部をさまざまな角度から見ることです。虫が複眼を持つところから来ています。鳥の目は俯瞰して全体を見渡すことを意味します。大空を飛ぶ鳥は、高いところから見渡すことができますね。また、魚の目とは、「流れを見る」という意味です。潮の満ち引きや潮流を踏まえるわけです。

 IT現場で要件をヒアリングするケースを題材に考えてみましょう。相手の話が漠然としていると、システムの要件を固めようがありません。また、相手の発言を一面的にしか捉えられないと、要件に抜け漏れが発生しがちです。相手の話を具体化したり、さまざまな角度から眺めたりして、理解を深める必要があります。そこで虫の目を駆使し、「複眼的」に捉えます。

 ただし、虫の目ばかり使っていると、全体の要点が見えにくくなります。今度は鳥の目の出番です。さまざまな情報といったん距離を取り、一つ上の観点から見渡します。さらに最終的な意味付けをする際には、魚の目を使い、組織、社会の流れの中で考えます。

 三つの目を意識した聞き方の例を挙げましょう。まずは虫の目です。「具体的には?」「例えば?」などと問いかけて、詳細な情報を引き出します。次の鳥の目は、「一言で表すとどういうことでしょうか?」などと質問してまとめます。三つめの魚の目では、「将来的にはどうなるでしょうか?」など、過去や未来のことを聞けるように質問します。以下のような流れになります。

相手「商品比較機能はトップページに欠かせません」
自分「具体的にはどんなことからそう思われますか?(虫の目)」
相手「顧客は最初から複数の商品を比較したがるのです」
自分「具体的には商品の何を比較するのですか?(虫の目)」
相手「価格や値引率、ポイントです」
自分「一言で表すと、最安値を顧客が分かればよいのですか?(鳥の目)」
相手「それだけではありません。頻繁に入れ替わるキャンペーン対象商品を、顧客に認知してもらう必要があります」
自分「要するに、このページの目的は価格の提示とプロモーションという理解で正しいでしょうか?(鳥の目)」
相手「そうです」
自分「プロモーション施策の変更はこれまでもよくあったことですか? 最近のことですか?(魚の目)」
相手「最近ですね。長年の方針がだいぶ崩れています」
自分「なるほど。方針変更の流れは今後も加速されますか?(魚の目)」

 虫の目で多面的に捉え、鳥の目でまとめて、魚の目で流れを踏まえた位置づけを確認することがお分かりいただけましたか。虫の目と鳥の目の質問を縦横無尽に行ったり来たりできるとさらによくなります。また、魚の目は業界や組織の経緯、歴史から、押さえておくべきことが見つかります。

出典:日経SYSTEMS 2016年9月号 p.9
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