Q.「再構築予定のシステムに対する考えをお聞かせください」と利用部門に尋ねました。ところが「いきなりそう言われてもな…」と濁されてしまい、考えを引き出せませんでした。どのように聞けばよいのでしょうか?

 システム企画の提案前など、関係者の考えを聞きたいケースはよくあります。とはいえ、「考えを聞かせてください」といきなり質問をしても、話し慣れている人や、日ごろから問題意識があって考えをまとめている人でもない限り、答えにくいかもしれません。

 そこで「呼び水」を準備しましょう。呼び水とは、相手の考えを引き出し、発展させる触媒のようなものです。(1)事例を出す、(2)選択肢を出す、(3)仮定を置く、(4)実物を見せる、という四つの方法があります。

 (1)の事例は、ITエンジニアのあなたもよくご存じでしょう。他の業界や他社の事例を引き合いに出す方法です。「A社では、発注業務をこんな手順で処理しています。御社ではどこが違いますか?」といった具合です。「その手順は当社には当てはまりません」「確かにそのような手順も有力ですね」「A社との違いは…」などと、事例を手がかりにしてさまざまな意見を引き出せます。

 ただし、例が一つだけでは相手の考えを十分に引き出せなかったり、発展しにくかったりする場合があります。そんなときは、なるべく極端な事例を二、三個提示するとよいでしょう。「この方向性がよいけど、ここまでではない」などと、相手の考え方の方向性とその度合いが見えやすくなります。

 (2)の選択肢は、企画提案に実際に盛り込めるレベルの具体案を複数提示して、相手の考えを引き出す方法です。「A案、B案のどちらが考えに近いですか?」などと提示があると、相手は何を答えればよいかが明確です。しかも、選択肢を選ぶという主体的な行動が入るので、「自分のことだ」と認識して考えを深めやすくなります。

 選択肢は「松竹梅」のようにメリハリを付けると効果的です。特徴が明確なほうが、相手の考え方や価値観を深く理解しやすくなるからです。

 ただし、相手がどう考えているのか方向性が見えない段階では、適当な選択肢を提示しにくい面があります。方向性が見えるまでは(1)の事例を活用し、方向性が見えてきたら選択肢を提示するとよいでしょう。

制約を外すと本質的な考えが出る

 (3)の仮定は、制約を取り払った仮の状況を想像してもらい、考えを引き出す方法です。なかなか出にくい要求を聞きたいケースに効果的です。

 例えば、「時間に制限がなければ何をしますか?」「技術的制約がないとしたらどんな状態にしたいですか?」と聞きましょう。「実現できるわけないから」と相手が口に出すことをためらっている考えが出やすくなります。そうした考えにこそ本質的な要求が含まれていることは少なくありません。

 「突拍子もない要求ばかり出てきそうだ」という心配はしなくて構いません。出てきた考えをすべて実現した状態をありたい姿と仮置きした上で、その中からなくしてもよい要求が何かを考えていってもよいからです。

 (4)の実物を見せるは文字通り、画面イメージ、端末、システムを活用する場所といった「実物」を相手の目の前に用意する方法です。目の前に何かがあると、人は考えを発展させやすくなります。視覚情報には文字情報の数百倍もの情報量がありますから、多様な考えを引き出しやすくなります。

 考えやアイデアは何もない状態ではなかなか引き出せません。呼び水があれば質問しやすくなり、相手も答えやすくなります。ぜひ準備してください。

出典:日経SYSTEMS 2017年3月号 p.9
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