これからニーズが高まる分野としてよく挙げられるのが、自らの死後に前向きに備えるサービス全般、いわゆる「終活」産業と呼ばれる分野だ。この種の取り組みは葬祭や供養業界を中心に2000年代からぽつぽつと見られるようになり、2011年には経済産業省主導で人生の終末期(ライフエンディング・ステージ)とその後についてのあり方を見直す研究会が作られるまでになった。現在は葬儀供養業界はもとより、医療介護業界や金融業界、地方自治体、そしてIT業界に至るまで終活をキーワードにした商品やサービスがみられるるようになっている。

 例えば、インターネット上で終活サービスを探してみると、オンラインサービスの生前準備から実際の葬儀手配まで総合的に扱うヤフーの「Yahoo!エンディング」(https://ending.yahoo.co.jp/)や、低価格な葬儀や法要がオーダーできるユニクエストオンラインの「小さなお葬式」(http://www.osohshiki.jp/)、遺影通信システム大手のアスカネットが手がける基本料金無料の遺影データ登録サービス「遺影バンク」(https://ieibank.com/)など、各方面で話題を集めているものが複数見つかる。「葬儀業界の黒船」といわれた流通大手イオンによる葬儀斡旋サービス「イオンのお葬式」(現在はイオンライフ株式会社として分社化、http://www.aeonlife.jp/)も、元はネットでの展開が中心だった。

ヤフーの「Yahoo!エンディング」
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 活性化している新興分野全般にいえることだが、ビジネスチャンスが多い一方で失敗のリスクも高い。終活に活路を見いだして、2~3年のうちに撤退したIT企業は枚挙にいとまがない。終活という言葉の先にある真のニーズをつかんだ企業と、見落とした企業のどこに差があるのか。これから3回にわたって分析する。

高齢化社会はとうに卒業、まもなく“多死社会”

 そもそも今なぜ終活ブームが起こっているのか。まずはそこから整理しよう。

 日本は世界でもまれにみる高齢者比率の高い国だ。総人口のうち65歳以上が占める割合が7%を超えると高齢化社会といわれるが、国立社会保障・人口問題研究所の統計によると、その閾値は1970年に突破。その後、1994年に14%を超えて高齢社会に、2007年に21%を超えて超高齢社会に突入している。

 2015年時点の比率は26.7%で、2025年には30%、2055年には40%を超えるといわれている。なお、2015年時点で米国は14.8%、ドイツは21.2%だ。総務省は平成27年9月発行の統計トピックス「統計からみた我が国の高齢者」にて、日本の高齢者比率が世界の主要国と比べて最も高いと認めている。

 高齢化に伴って年間死亡者数も増えており、2007年に100万人を突破して以来ほぼ右肩上がりで、2014年には127万3020人を記録した。国立社会保障・人口問題研究所の推計によるとピークは2038年の167万人で、以降は漸減していくとみられている。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者入りする2025年頃を境に、日本は“多死社会”に突入すると警鐘を鳴らす専門家は多い。

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