価格が曖昧で非効率だった印刷業界で、高品質、低価格を売りにしてインターネット印刷サービスを提供するラクスル。最近ではチラシのデザインから印刷、ポスティングまで一貫で手掛ける中小企業向け集客支援サービスも始めた。デジタル化のあおりで縮小する一方の印刷業界をなぜ選び、そして起業したのか。ラクスルの松本恭攝代表取締役が語った。

photo:陶山 勉

 インターネットを通じて高品質で安価に印刷物を発注できるサービスを提供しています。全国にある印刷会社が1000社以上登録しており、現在はそのうち100社と取り引きしています。

 起業前はコンサルティング会社のA.T.カーニーに所属していました。2008年に起きたリーマンショックの影響で、多くの企業がコスト削減を試みていた時期で、その手伝いをしていました。間接費のコストを見ると、印刷コストが最も削減率が高かったのです。そこで印刷業界を調べてみると、実にいびつな構造をしていることに気づきました。

 例えば、印刷を複数社に見積もりを出してみると、コストの差が大きく、ばらつきが多い。なぜか。調べてみると理由は2つありました。

 一つは、名刺を刷る場合、通常の印刷機でも対応できますが、名刺専門の印刷機の方が安く仕上げられます。印刷機は1台数千万円から数億円するものまで幅広く、各社は自社の設備で対応しようとします。機械と印刷物の種類のマッチング次第でコストが大きく変わるわけです。

 もう一つは、印刷機の固定費が大きいことに起因します。受注しなければ何の利益も生まないため、眠らせておくぐらいなら動かした方がいいと判断する印刷会社もあります。そうすると、相場の価格というものはなくなり、すべて見積もり次第となってしまいます。つまり発注する側から見て、非常に不透明な産業だったのです。

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