まず、読者の皆さんに問題を出したい。「業務プロセスや業務ノウハウの属人化は正義か悪か」。いかがだろうか。当然、皆さんは「そんなの悪に決まっているだろ」、あるいは「木村のことだから、逆張りで『正義だ』と言いだすのではないか」と思っていることだろう。もったいぶらないで答えを先に言う。米国企業にとっては悪だが、日本企業にとって正義である。

 この回答を読んで「なるほど!」と納得した読者は何人いるだろうか。大方の人は、米国企業のほうはともかく「日本企業にとって属人化は正義」には合点がいかないはずだ。確かに日本企業の経営者も「業務の属人化は避けねばならない」などと口にする。そもそも企業にとってシステムを導入する理由の1つは、業務の属人化を排除するためのはずだ。だから「属人化は正義」など言われると、IT部門としては立つ瀬が無い。

 だが、日本企業の経営者は口に出す言葉とは裏腹に「属人化は正義」と考えている。もっと正確に表現するならば「無自覚に属人化は正義と思っている」と言うべきだろう。順を追って説明しよう。米国企業のほうは簡単だ。米国企業の場合、従業員は2年、3年といった短い期間で転職してしまうから、経営者にとって業務の属人化は絶対悪なのである。

 米国企業では業務プロセスを標準化し、業務ノウハウを組織として共有化しておかなければ、優れた業務手順や知見、ノウハウを持っていても従業員が辞めてしまうと散逸してしまう。だから四半世紀も前の1990年代から、当時は完成度の低いERP(統合基幹業務システム)を無理やり導入して業務プロセスを標準化したり、これまた完成度の低いグループウエアを使ってノウハウや知見の共有化と形式知化を推進したりしてきたわけだ。

 一方、日本では終身雇用の前提があるため、特に大企業では従業員がほとんど辞めない。だから属人化させても、業務プロセスや業務ノウハウなどは現場にたまり、日本企業の強みとなった。日本企業の経営者が大好きな言葉で言えば「現場力」というやつだ。多くの経営者が言うではないか。「経験を積んだ技術者や作業員らの優れたノウハウや知見、技能こそが付加価値の源泉」と。まさに現場力とは属人化による強みである。

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