撲滅キャンペーンをやるなら支援するぞ

 このようにITベンダーが強要される過剰サービスを書き並べると、よくもまあ、こんなにも客はモンスターで、ITベンダーは哀れな存在なのかと呆れてしまう。ただ、呆れているだけではいけない。多重下請け構造をフル活用する人月商売のIT業界は、物流・宅配業界以上に労働集約型産業だから、過剰サービスの負担は全て、現場の技術者が背負い込むことになる。

 だからITベンダー、特に大手SIerは、現場丸投げの働き方改革などとぬるいことを言っていてはダメで、経営層が前に出て客による過剰サービスの強要を止めさせなければならない。「無理、無理、絶対に無理」との声が聞こえてくる。確かにヤマト運輸のようなチャンピオン企業が存在せず、大手SIerと言っても大手の客と比べれば圧倒的に立場が弱いから、腰が抜けるほどビビッても仕方がない。

 それゆえにIT業界として過剰サービス撲滅キャンペーンを張るべしなのだ。「業界として」と言うと、普通は業界団体の出番だが、IT業界だとまず無理だ。なんせ大手でもコンピュータメーカーなら電子情報技術産業協会(JEIT)に所属しているし、ITサービスが主力の“純粋な”SIerは情報サービス産業協会(JISA)の会員。とにかくバラバラだし、そもそも業界団体として「客に物申す」なんてことはできそうもない。

 私案だが、ここは大手、そして中堅SIerあたりが連合して、過剰サービス撲滅キャンペーンに乗り出したらどうか。客の社名は抜きでよいから、各社の技術者が経験した問題事例を持ち寄って類型化し、こうしたサービス要求はNGとして公表すればよい。何らなら、日ごろから日本企業の過剰サービス要求を苦々しく思っている、外資系ITベンダーも巻き込めばよい。

 そういう話なら、極言暴論の趣旨とも合致するので、私も記事の面から強くサポートさせてもらうぞ。実は2008年6月に、私は日経コンピュータに「御社の発注、3つの大問題」と題する特集を書いたことがある。当時はまだ「お客様を批判するなどもってのほか」の時代だったが、ITベンダーを説得して発注における客の問題点を聞き出し、特集としてまとめたのだ。そうしたら大反響。ユーザー企業のIT部門からは多数の反省の弁が寄せられた。

 同じことを、もっと大々的にやりたいものだ。過剰サービスの強要という客の横暴を白日の下にさらして、是正を“強要”しない限り、IT業界の長時間労働の是正、ホワイト職場化など夢のまた夢だ。まともに要件定義ができないなどIT部門の大問題がその根っこにあるのだから、逆に是正を強要できれば、結果的にユーザー企業のIT活用の適正化やIT部門の強化にもつながるぞ。

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