米アドビシステムズが「Adobe Sensei」なる人工知能(AI)を発表したのは昨年のことだ。「先生」という特徴的なネーミングも相まって、同社がクリエーティブの世界でどのようにAIを活用しようとしているのかを明示した点で大きな話題となった。

 そこから1年。2017年10月に開催された年に1度のアドビの技術イベント「Adobe MAX 2017」では、確実に「先生」が進化していることを披露した。PDFの会社からクリエーティブの会社へ、そしてマーケティングまでを担う会社へと次々と変貌を遂げてきたアドビ。それらすべてをAIによって高度化する「AI企業」に変貌を遂げようとしていることを改めて示した。

「Adobe MAX 2017」のステージに立ったシャンタヌ・ナラヤンCEO
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 アドビは「Photoshop」をはじめとするソフトウエア群を、2013年に一気にクラウド化している。それまでのパッケージビジネスからビジネスモデルを大きく変える決断をしたのが、2007年から同社を率いるシャンタヌ・ナラヤンCEOだ。ナラヤンCEOは、2016年のインタビューで10万~40万円ほどのパッケージ製品による売り上げを捨てることに恐怖はなかったのか、という記者からの問いに、下記のように答えている。

「経営の指標となる数字が売り上げのみであれば、躊躇したかもしれない。一方、経営が健全であることを証明するのは売り上げの数字だけではない。アニュアル・リカーリング・レベニュー(年間での繰延収益:顧客から毎月一定の売り上げが見込める業態の経営指標の1つ)、サブスクリプション(月額課金による月次での売り上げ)、ブッキング(受注契約金額)といった数字についての見込みを提示できれば、十分に勝負できると読んでいた。価格を抑えることで、新規顧客もつかめる」

クラウド化がもたらした本当の「果実」

 その狙いは当たった。その後アドビは、売上高を伸ばし続け、最新の2017年第3四半期の売上高は、前年同期26%増の18億4000万ドルとなり過去最高となった。クラウド化は、今となっては、AI時代に向けたデータ収集の伏線だったともいえる。アドビがクラウド化によって得られた「果実」は、新規顧客にとどまらず、「データ」というAI時代になくてはならないものだったのだ。

 今やアドビは、クリエーティブに関するあらゆるデータを持つ世界唯一の企業ともいえるかもしれない。クリエーターが何を考え、どんな制作物を作り、それをどう使い、その制作物を見た顧客はどう反応したか。これらのデータをアドビは完全に掌握しているのだ。

 アドビは今AIをどのような考えの下、開発しているのか。現状のAI開発について、同社のデジタルメディア事業部門担当エグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのブライアン・ラムキン氏が解説してくれた。

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