PMI日本支部はこのほど、日経SYSTEMS本誌の取材に応じ、プロジェクトマネジメント体系の「PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)ガイド」の新版、第6版の概要を明らかにした。PMBOKガイドは既に、エンタープライズ分野のシステム開発プロジェクトではデファクトスタンダードだ。その改訂は、IT現場にも大きな影響を与えている。

強化ポイントは大きく三つ

 まず公開時期は「2017年9月」で確定した。これまで4年おきに改訂してきたが、今回は5年ぶり。PMI日本支部の鈴木安而氏(理事)は1年遅れた理由を「パブリックコメントで来た多くの意見を反映したため」と説明する。

 気になる改訂のポイントは大きく三つある。(1)アジャイルや反復手法の取り込み、(2)プロジェクトマネジメントの国際規格「ISO21500」への準拠、(3)「戦略的およびビジネス知識」の追加、の三つだ(図1)。背景には、新たなビジネスを創出する「イノベーション創造プロジェクト」の増加があるという。

図1●PMBOKガイド 第6版の強化ポイント
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 例えば不確実性への対応がその一つだ。(1)アジャイルや反復手法の取り込みとは、国内では2015年12月に発行された「PMBOKガイド 第5版 ソフトウェア拡張版」で策定した内容を中心に取り込むもの。プロジェクトの特性を「予測型」と「適応型」に分け、それぞれ具体的なアプローチを整理する。PMBOKガイドが「計画ありき」と指摘される誤解を払拭するもので、実プロジェクトでのテーラリング(カスタマイズ)についても詳しく明記する。

 (2)のISO21500準拠は、第5版で10番目の知識エリアとして追加された「ステークホルダーマネジメント」をより強化したもの。具体的にはISO21500で定義するステークホルダーマネジメントの内容に準拠し、同知識エリアと国際標準の整合を取る。イノベーション創造プロジェクトでは多くのステークホルダーが参加する。そうした現状に対応するのが狙いだ。

「プログラム」の一部を収録

 現場のプロジェクトマネジャーにとって影響が大きいのは(3)「戦略的およびビジネス知識」の追加だろう。ひと言でいえば「経営やビジネスが分かるプロジェクトマネジャー」(鈴木氏)への変革を促す。QCD(品質・コスト・納期)を中心に計画・監視・コントロールするかつてのプロジェクトマネジャーから、ビジネス視点というより上位の役割を求めている。

 例えば、第6版ではプロジェクトマネジャーがビジネスの視点に立ち、プロジェクトがもたらす価値創造や収益管理を担う。具体的には知識エリアの一つである「統合マネジメント」に、ベネフィットマネジメント計画書を追加。ここでプロジェクトマネジャーにはベネフィットとしての価値の定義をはじめ、財務、収支、投資回収といった計画立案を求めている。

 もっとも、これらはユーザー側のプロジェクトマネジャーならむしろ前提となる知識だ。第6版では、特にユーザー責任を明確にしたともいえる。鈴木氏は「経営に密着したマネジメントを掲げている。もともとプログラムマネジメントの分野だった知識の一部を、プロジェクトマネジメントの分野にも取り込んだ」と話す。プログラムとは、複数のプロジェクトをまとめて目標を達成する考え方。当然、経営やビジネスの視点が強い。

 ただし、これではプログラムとプロジェクトの境目が分かりにくくなる。そこで第6版では、ポートフォリオマネジメント、プログラムマネジメント、プロジェクトマネジメントという三つのPMの位置付けも明確にする。例えばプログラムマネジメント領域のガバナンスマネジメントに対応するため、プロジェクトマネジメント側の役割やドキュメントなどを明示する。

 もはや単独のプロジェクトだけを見ていればよいわけではない。プログラムを構成するプロジェクトとして、全体の中の「部分」としての役割をマネジメント上果たさなければならない。

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