国土交通省がITによる航空分野の革新へ本腰を入れ始めた。AI(人工知能)や自動運転などで空港内の旅客・貨物動線を効率化し、人材不足の解決と世界の観光需要増の取り込みを図る考えだ。

1月30日に開催された「航空イノベーション推進官民連絡会」の第1回会合
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 2018年1月30日の昼下がり。東京・羽田空港の一角にある大ホールに国内の航空各社と各地の空港運営会社、航空業界向けの設備・システムメーカーなどの関係者が一同に会していた。国土交通省が業界団体と共同で開催した「航空イノベーション推進官民連絡会」の第1回会合が開かれたのだ。

 「我が国の空港が世界に冠たる空港として勝ち残るには、AI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)など先端技術を駆使したイノベーションが不可欠。航空サービスの向上に皆さんの英知を」。国交省の蝦名邦晴航空局長はそう語気を強めた。

 国交省はこの席上、ITによる航空業界の革新に向けたロードマップを明らかにした。空港内で旅客や貨物を運ぶ自動車や搭乗橋の自動運転、「プッシュバック」と呼ばれる航空機の出発時のけん引作業の自動化などの実証実験を2018年度から展開し、まずは東京五輪が開かれる2020年の実用化を目指す。処理性能の高い最新鋭の保安検査用装置の導入は補助金増額で支援する。

東京五輪を目指し、ITによる航空業界の刷新を官民合同で推進
図 国交省と航空業界が示す「航空イノベーション」の背景と概要
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 さらに2030年には、コンテナへの手荷物の格納にAIとロボットを導入する意向だ。現在は一つひとつのスーツケースを係員が見て、パズルのように積み込み方を考えて手作業で格納しているが、完全自動化を目指す。

インバウンド取りこぼしを懸念

 国交省がこれほど航空業界のIT革新に注力する背景には、アジア域内の航空・観光産業を巡る競争激化がある。

 ここ数年、国内の航空・観光業界は「インバウンドさまさま」の状況だ。国際線の旅客数は2012年からの4年間で6069万人から8654万人へ43%も増加。この原動力が、同期間に836万人から2404万人に伸びた訪日外国人だ。静岡空港や函館空港では外国人の入国が年間10万人を超え、宿泊や観光で地方経済を下支えする。

 新興国の経済成長に伴い、世界の観光需要は2010年の9.4億人から2030年に18億人へ増えると予想されている。国交省や航空・観光業界は「2020年に訪日外国人4000万人」を掲げ観光需要の取り込みに努めているが、そこでネックとなるのが空港だ。

 国内の空港で出入国審査や保安検査の担当者や、航空機の誘導や荷物の搭載を担うグランドハンドリングなどの担当者は人手不足が進みつつあり、今後旅客数が増えた際にボトルネックになる可能性がある。一方でアジアでは2017年以降、シンガポールやソウル、北京、香港、バンコクなどで新空港や新ターミナルの開業が相次ぐ。日本が対策を講じなければ観光需要の増加分をそれらの各都市に奪われる――。そんな危機感が国交省を突き動かしているのだ。