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連載企画【第1回】 

Cell Broadband Engine
これまでの概念を覆す新型プロセッサに注目が集まっている。IBM,ソニー,ソニー・コンピュータエンタテインメント,そして東芝が共同で開発した「Cell Broadband Engine.(以下,Cell B.E.)」である。従来のマイクロプロセッサに比べて圧倒的に高性能な次世代プロセッサであるCell B.E.は,今後どのような世界を切り開いていくのだろうか。
将来の要求に応える新しいアーキテクチャ


大和システム開発研究所
次世代システム&テクノロジー担当部長
シニア・テクニカル・スタッフ・メンバー
佐貫俊幸氏

――Cell B.E.が開発された背景には,何があるのでしょうか?

佐貫従来のマイクロプロセッサは,周波数に比例して性能が上がり,年率45%以上のペースで高性能化されてきました。しかし,現在のテクノロジーやアーキテクチャのままでは,これ以上の高性能化に限界が見えてきたのです。プロセッサの限界がITの進化を阻みかねないという危機感から,まったく新しいアーキテクチャが必要になったのです。

――Cell B.E.は,これまでと比べて,どのくらい性能が違うのでしょうか。

佐貫スーパーコンピュータ・クラスの性能を1つのチップで実現する」というのが開発プロジェクトの目標であり,夢でした。1つのCell B.E.の中には,8個のSPEと呼ばれる高速プロセッサと1個のPowerPC®をベースにした汎用プロセッサを統合しています。高度な並列処理機構や,高速処理が可能なメモリ構造を採用することで,処理スピードを飛躍的に向上させます。性能の単純な比較はできませんが,プログラムによっては,最新のPC用のプロセッサに比べて,10倍以上早く処理できると思います。


Cell B.E.によって拡がる今までとは違うITの活用

――現在のシステムをリプレースするためのものではないのでしょうか。

佐貫 Cell B.E.は,従来処理が難しかった課題に対応したり,今までにはない新しいアプリケーションを実現する上で真価を発揮します。例えば,多数のカメラやセンサーから得られる膨大なデータをリアルタイムに解析して,セキュリティシステムに応用することも可能となるでしょう。既存のシステムを置き換えるのではなく,ITの可能性を広げることにCell B.E.の応用が期待されています。

――具体的にはどんな分野で使われていくのでしょうか。

佐貫 まず,デジタルメディアの分野では,コンテンツの制作や流通などに用いられるでしょう。また,大量のデータに対して高度な計算処理能力が必要となる医療画像情報の解析や,刻一刻と変化する市場情報のもとでの金融商品のシミュレーションなどに利用されていくと思われます。従来膨大な処理時間を必要としていた資源探索や生命科学の分野でも,Cell B.E.のパワーが発揮されることでしょう。また,産業用装置などにCell B.E.を組み込むことで,装置の性能を高めるだけでなく,新しい利用方法が具現化できることでしょう。
IBMでは,Cell B.E.を採用したブレードサーバーIBM BladeCenter® QS20を製品化しており,スーパーコンピュータにもCellB.E.を活用していく予定です。また,CellB.E.に関する技術情報や開発環境を積極的に公開して,皆様とともにCell B.E.の適用範囲を広げ,次世代を担うアーキテクチャとして普及させていきたいと考えています。


日本アイ・ビー・エム株式会社
http://ibm.com/jp/ibm/apto/cellbe/

IT進化の軌跡
ITが社会活動に不可欠なインフラとして浸透し,いつでも,どこでも,誰でも,意識せずに必要な情報にアクセスできるユビキタス社会の到来も近いといわれている。ビジネスだけでなく,日常生活でも身近な存在となったIT はどのように生まれ,どう発展してきたのか。今後ITのメリットを享受するためには,歴史的な背景を理解しておく必要があるだろう。
ITの形が変わるとともに求められる技術も変化する


IBM DE(技術理事)
エグゼクティブ・テクニカル・アドバイザー
IBM科学アカデミー会員
中島丈夫氏

――これまでのITの歴史を振り返ると,どんな流れになっているのでしょうか。

中島 大小のうねりを描きながら,中心的な存在が変わり,集中から分散,統合と多様化へと利用形態が変わってきたといえます。コンピュータは科学者の集合知として誕生しましたが,そこでは科学者のコミュニティがイニシアチブをとっていました。それが第二次世界大戦で暗号解析などに利用され,その後NASAのアポロ計画などとともにシステムの要としてビジネスへの応用が急速に拡がり,IBMのようなシステム系企業がリーダーとなって,企業での応用が永くIT世界を牽引するようになりました。
やがてアップルコンピュータやマイクロソフト,インテルといった一般向けにコンピュータ技術を提供するコモディティ企業が誕生し,裾野が大きく拡がりました。続いてインターネット系企業が現れるとともに,Linuxに代表されるオープンな技術が注目されるようになり,今はまたコミュニティが力を持つようになりつつあります。もちろん黎明期の科学者のコミュニティとは違いますが,形態としては似ています。営利を目的とする企業だけではなく,コミュニティがIT技術の進化の中心的な存在ともなっているのです。

――活用する側から見た中心的な存在も変わってきたのでしょうか。

中島 活用するシステムの中心が変化してきています。当初はメインフレームが中心でしたが,それがPC,インターネットへと移ってきました。現在のIT活用の中心はコアビジネスですが,やがてユビキタス時代になって「社会」がIT活用の中心となるでしょう。
この変化に伴って,技術のポイントも変化してきています。メインフレーム中心の時代はシステム指向でしたが,PCの時代はツール指向,インターネットの時代はネットワーク指向でした。ビジネス中心の現在はサービス指向であり,社会中心となる将来は,イベント指向になるでしょう。当然,そこで必要とされる技術は変わってきます。


技術革新の積み重ねがITの進化を実現させた

――ITの進化の過程で,画期的な技術革新も多くあったと思います。

中島 ITの歴史はIBMの歴史でもあります。1944年にIBMがハーバード大学と共同開発した「Harvard MarkⅠ」は,1946年のENIACとともに世界最初のコンピュータの1つと考えられています。幅15メートル,重さ5トンの大きさでした。その20年後の1964年に初の汎用コンピュータである「S/360.」をIBMが発表し,これによってコンピュータの進化の方向性が固まりました。
S/360では,初めてハードウエアとソフトウエアの境界が定義され,OS,アプリケーション,I/Oインタフェースといった基本構成も定義されました。コンピュータシステムという様式,つまりアーキテクチャが生まれたのです。IBMはこれらの仕様を公開し,その後のコンピュータの進化は,ほぼこのS/360アーキテクチャを基盤にして発展してきたのです。

――今もそのアーキテクチャが生きているわけですね。

中島 お話しした要素以外でも,コンピュータと対話するツールであるコンピュータ言語や,リソースを抽象・共有化する仮想化技術,ディスク装置で構成されるストレージといった技術も画期的なIBMの発明であり,PCもIBMがPC/ATの規格を開示したことで,爆発的な発展を遂げました。現在のPOWER™に引き継がれているRISCアーキテクチャも,ドラスティックにパフォーマンスを向上させたという点で大きな発明です。
一方で,オンラインという利用方法も画期的なものです。大学でのタイムシェアリングや,空軍のSAGE,座席予約のSABREといったコンピュータの遠隔利用は米国IBMが大きな貢献をしていましたが,1970年の大阪万博と,それと前後して導入された銀行オンラインは日本IBMが貢献しました。その後も製鉄オンラインや新聞や放送システムなど日本でも革新が続きました。


急激な変化にも対応できる次世代システムが必要に

――数々の発明がITを進化させてきたわけですが,こうした技術革新は今後も生まれてくるのでしょうか。

中島技術革新には横方向と縦方向の2方向があります。今ある技術を安く提供してコモディティ化を促すような横方向の革新と,今までになかった技術を発明し新たな価値を創造する縦方向の革新,つまりイノベーションの2つです。
イノベーションは,ビジネスや社会で活用されて,価値を創造してこそ意味を持ちます。そのためには,テクノロジー,ビジネス,ソサイエティという3つの視点が重要です。この3つの重層があって,技術的な発明・発見が消費者でのイノベーションへとつながってゆくのです。IBMとしては,お客様である企業が社会でイノベーションを引き起こすために,重層的な文脈でIBM自らがイノベーションを行うことが使命だと考えています。

――これまでの歴史から見て,今後ITはどんな役割を果たしていくのでしょうか。

中島これからはあらゆるビジネスと社会の中心にITが置かれる時代です。SOAやWeb2.0を支えるインフラとしてのシステムには,これまで以上に柔軟性や信頼性,そしてスケーラビリティが求められます。一方でこれまでの利用技術や接続性を包含する一貫性も重要です(図)。
新しい技術が大きなメリットをもたらすとしても,すでに社会活動のインフラとなっている現行システムを止めることはできません。新しいワークロードが増え続ける一方で,これまでのワークロードも使い続けられなければならないわけです。そこでは,不連続なしで使い続けられる一貫性や拡張性,そしてコストを抑えた運用性が必須です。
システムはメーカーのものではなく,お客様のものです。どんな急激な変化にも対応でき,常に新しい機能を搭載できる先を見越したアーキテクチャを提供し続けることで,ITはこれからもお客様のイノベーションを支えるインフラとして進化していくでしょう

*画像をクリックすると拡大表示されます。


日本アイ・ビー・エム株式会社
http://ibm.com/jp/event/museum/rekishi/topics.html
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