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米国セミナーレポート IBM Information On Demand  Conference 2007 顧客企業の情報統合と情報活用を強化するための最新戦略を発表

米IBMは2007年10月14~19日,顧客企業の情報統合と情報活用を強化するための同社の最新戦略を発表する「「インフォメーション オンデマンド カンファレンス(Information On Demand Conference,IODC)」を開催した。企業が収集・蓄積するデータは増加の一途で,それをいかに臨機応変にビジネスに有効活用できるかは,どの会社にとっても最大の関心事。今回は約6500人の参加者を集めたこの会議を現地で取材した。

既存システムを使いながら新しい価値を引き出すIOD戦略

スティーブ・ミルズ上級副社長

IOD会議初日の基調講演。まず壇上に立ったのはIBMのソフトウエア事業を率いるスティーブ・ミルズ上級副社長だ。「みなさんは過去40年以上,様々な情報技術(IT)に投資し,インフラを構築してきた。しかしそれは言わば,“準備運動”に過ぎない。ITに真の威力を発揮させるための重労働はこれからだ」と会場に呼び掛けた。とはいえ,企業は既存のシステムの稼動を停止して白紙からスタートすることはできない。従来のシステムを使い続けながら,新しい価値をいかに引き出すか。その解決策となる「最大の製品ポートフォリオを持つのがIBMだ」とミルズ氏は強調した。

「オンデマンド」とは「要求に応じて」という意味で,IODは「必要な情報を必要な人・アプリケーションが,必要な時に必要な形で」利用できるようにしようという考え方だ。これまでにも,基幹業務システムのデータを情報系システムやデータウエアハウスにおいて他の用途で使おうという動きはあった。しかし,今増えているのは,ある基幹業務システムの持つデータを,同時に別の基幹業務の用途で利用したいという新たな要求で,IBMのIOD戦略は顧客のそうした要望に応えるためのイニシアチブだ。

では,実際にIODを実現している会社にはどんなところがあるのか。次に基調講演に立ったカナダの保険会社,TheCo-operatorsGroup社の最高情報責任者(CIO)であるビビアン・フォン上級副社長は自社の成功例について次のように紹介した。

4000人以上の社員,約600の支店を抱えるCo-operators社は,家財,自動車,生命保険など複数の商品を取り扱う。同社は2003年に顧客中心の事業形態に改革することを決めたが,当時は複数のシステムにばらばらに顧客データが存在し,例えば「生命保険に加入しているウィリアム・スミス氏が,家財保険に入っているビル(ウィリアムの略称)・スミス氏と同一人物であることを認識できなかった」(フォンCIO)。このままでは顧客サービスの向上は見込めなかったため,同社の顧客のひとりひとりに対して各人に関連するすべてのデータを1つにまとめ,それを代理店やコールセンターまで全社で共有できるような「CustomerDataHub」を作ることにした。

フォンCIOのチームは市場に出ている様々なソリューションを検討したところ,IBMの顧客データ統合製品である「WebSphereCustomerCenter」を使うことにした。同製品はサービス指向アーキテクチャー(SOA)をベースにした情報管理方式を用いることで全社レベルの顧客データ管理を実現し,事業運営の最適化を図るためのアプリケーション基盤を提供する。

Co-operators社は現在,100万人の顧客データをこれで管理しており,例えば「ある若者が事故を起こし,昔だったらすぐに自動車保険をキャンセルするところだったのを,今はこの若者の両親が当社の長年の顧客であることが一目で分かるようになり,キャンセルする前に両親と話し合いを持つといったことが可能になった」と同CIOは顧客満足度の向上が実現したと説明する。またこの副産物として,従来は結婚や引越しなどによる顧客の姓名・住所変更などの処理を専門とする社員を20人雇っていたのが,今は5人に減らすことができたという。

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IODの考え方を示す3つのレイヤーすべてで技術革新に取り組む

IODとはいわば「SOAを導入するためのデータ管理」。そしてIBMはIODの考え方を説明するのに,いわゆる「情報」を「データ」と「コンテント」と「インフォメーション」の3つのレイヤーに分ける。IBMソフトウエア部門の営業責任者であるマイク・ボーマン副社長は,IOD会議が開催されたカジノの街,ラスベガスにちなんだ例え話をした。まず,ミルズ上級副社長の写真を大きく映し出し,同上級副社長に関する「データ」として「名前,体重,学歴」をおもしろおかしく紹介した。次にミルズ氏が「カジノで8000ドルを負けた」というのが「コンテント」。そして,そこからカジノ会社が引き出さなければならない「インフォメーション」は「ホテルの部屋をアップグレードし,花束を贈れ」ということ。一方,ボーマン副社長は自身の「データ」も紹介し,「コンテント」は「2万5,000ドルの大勝ち」,「インフォメーション」は「二度と招待するな,別のカジノに追いやれ」というものだった。

Information Management部ゼネラル・マネジャーアンブッジュ・ゴヤール氏

この話を受けて,次に壇上に上ったIBMのInformationManagement部門のゼネラル・マネジャー,アンブッジュ・ゴヤール氏は,「IBMは,データとコンテントとインフォメーションの3つのレイヤーすべてで技術革新に取り組んでいる」と語った。そして,「データ」の領域ではハイブリッドデータベースである「IBMDB29.5」を,「コンテント」ではエンタープライズ・コンテンツ管理製品の「IBMContentManagement8.4」のバージョン・アップなどを発表した。「ContentManagement8.4」はパフォーマンス,拡張性,操作性が向上し,利用者は従来に比べてより豊富な情報を活用しながら,的確な意思決定を下すことができるようになったという。

一方,IBMがここ数年,次々に買収してきた会社・技術は「インフォメーション」の領域に含まれる。この分野の製品群は「インフォメーション・インテグレーション」と「インフォメーション・アクセス」の2つに分けられるが,「インフォメーション・インテグレーション」の中核は,包括的なデータ統合を実現する「IBMInformationServer」。今回は同サーバーに,DataMirror社の買収によって得られたリアルタイムのデータ統合技術や「IBMSystemz」への対応などを実現した。かつて,乱立したミドルウエアの問題を解決するべく登場し,普及したアプリケーション・サーバーのように,今後は「インフォメーション・サーバーも同じくらい広く行き渡るだろう」とゴヤール氏は予測する。

そしてIBMにとってIOD戦略のカギとなる次の基幹製品が「インフォメーション・アクセス」の部分を担う「IBMMasterDataManagementServer」だ。顧客,製品,会計など多種多様なマスター・データを管理し,それらのデータを好きなように定義して活用できるようにするソフトで,一例として保険会社のCo-operators社が紹介した「WebSphereCustomerCenter」のすべての機能も提供する。IOD会議では新しい「MasterDataManagementServer」のベータ・テスト・プログラムの開始が発表され,2008年の第1四半期には製品版をリリース予定という。

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NY市警の犯罪捜査支援システムReal Time Crime Center

ニューヨーク市警本部(NYPD)が構築した犯罪捜査支援システム「Real Time Crime Center」を説明するルーベン・ベルトラン警視正。

ニューヨーク市警本部(NYPD)が構築した犯罪捜査支援システム「Real Time Crime Center」を説明するルーベン・ベルトラン警視正。

IODの威力を理解するために,もう1つ具体例を紹介しよう。世界でも有数の犯罪多発地域を管轄するニューヨーク市警本部(NYPD)が構築した犯罪捜査支援システム「RealTimeCrimeCenter」だ。ニューヨークは過去16年間で,殺人事件の件数が9割削減されたというが,それでも1年間の捜査事件総数は20万件に及ぶという。従来は市内の5つの区でそれぞれシステムがばらばらで互い検索することができず,しかも「捜査令状」「麻薬」「家庭内暴力」といった内容によってもシステムが異なっていた。「90以上のシステムが別々のパスワードを必要としていた状況で,留置しなければならないのは犯罪者なのに,情報のほうがロックアップされた状態だった」とルーベン・ベルトラン警視正は振り返る。

ニューヨーク市警は2005年にこの問題を解決するべく大規模なIT改革に乗り出すことを発表し,ベルトラン氏が実務上の責任を任された。ちょうど,IBMが犯罪捜査支援システム「CrimeInformationWarehouseSolution」の商品化に取り組み始めていたころで,NYPDはIBMの協力を得ることにした。その結果生まれたNYPDの「RealTimeCrimeCenter」は,市内のすべての捜査リポートを1つのページから検索,アクセスできる。

犯罪容疑者の名前や体格,人種のみならず,入れ墨の場所や形によっても検索可能で,ベルトラン氏によると,この入れ墨の検索によって最近,たまたま別の事件で被害者になったある重犯罪者を逮捕することができたという。「新システムなくしては,ぜったい気付かず,逃していただろう」と同氏。また,日本の「110番」に相当する「911番」にかかってきた電話番号もすべて記録,検索できるが,この情報を犯罪容疑者が使った電話番号などと照らし合わせることで電話会社に問い合わせる手間ひまを省略できるようになり,「迅速な事件捜査に大いに役立つ形になった」(ルーベン氏)。

これからは「business-drivencomputing(ビジネス主導コンピューティング)の時代」とIBMのミルズ上級副社長は主張する。NYPDにとってみれば,犯罪捜査は立派な「ビジネス」。あらゆる業務や市場にとってその「ビジネス」の形態は異なり,どれもがITに大いなる期待を寄せている。IODの真価が姿を現すのはこれからだ。

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bunner

お問い合わせ先 日本アイ・ビー・エム株式会社
IOD推進部
SALESASC@jp.ibm.com

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