日本通信は昨年4月にNTTドコモを相手取り、2010年度と2011年度のパケット接続料の算定式が両社で合意した内容と異なるとして、従来通りの履行を求める訴えを東京地裁に起こした(現在も係争中、関連記事:日本通信が接続料算定式巡りドコモを提訴)。日本通信は事前に総務省に相談したが、「民間企業同士の合意に介入できない」となり、民事訴訟に踏み切った経緯がある。にもかかわらず、まさに訴訟に関係する内容を裁判と並行して研究会で議論するのはおかしいとの主張だ。

 最大の争点は、パケット接続料の算定方法。パケット接続料も、設備費用(原価+適正利潤)をトラフィック(通信量)で除算することで算出しており、「帯域幅課金」の場合は「総帯域幅」に占める10Mビット/秒当たりの単価を貸し出し料金とするのが一般的だ。ただ、この「総帯域幅」の解釈については、総務省が2010年3月に策定した指針「第二種指定電気通信設備制度の運用に関するガイドライン」にも明記されていない。

 総帯域幅の解釈には、(1)各通信設備の伝送容量の総量(基地局側帯域)、(2)インターネット接続などに使うパケット接続装置の伝送容量の総量(ISP側帯域)などが考えられる(図1)。

図1●総帯域幅の解釈については意見が分かれる
総務省の「モバイル接続料算定に係る研究会」の資料から抜粋
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 当然、日本通信は接続料が安くなる方向に作用する基地局側帯域、NTTドコモは高くなる方向に作用するISP側帯域の採用をそれぞれ望むわけだが、日本通信とNTTドコモの相互接続では、(3)基地局側帯域幅比率とISP側帯域幅比率の平均値となった。これは十分な議論を尽くす時間の余裕がない状態で決めた「妥協の産物」とされ、両社とも納得していない(関連記事:NTTドコモが日本通信に反論、「接続約款制度の理解が不足」)。

 研究会では、最大の当事者である日本通信にヒアリングしないまま、欠席裁判のような状態で「ISP側帯域とすべき」という方向性が固まっていくことになる。「欠席裁判」と表現した理由は二つある。一つは、研究会が冒頭の音声接続料を主なテーマとしており、ヒアリング対象は携帯電話事業者が中心であること。すべての携帯電話事業者は、自社に優位となる「ISP側帯域」を支持するはずだ。この点については、他のMVNOへのヒアリングもあったとの反論があると思うが、多くのMVNOにとって上記の解釈はあまり大きな問題ではないことが、もう一つの理由である。

 MVNOが携帯電話事業者から通信設備を借りる方法には、主に「卸」と「接続」の2種類がある。「卸」はいわゆる回線の再販で、携帯電話事業者が相対で接続条件や料金を決められる。一方の「接続」は、携帯電話事業者とMVNOがPOI(相互接続点)を責任分解点として互いのネットワークを接続するもので、接続条件や料金は接続約款に基づく。現状、ほとんどのMVNOは卸契約とみられ、総帯域幅の解釈は直接的には関係ない。むしろ卸契約のMVNOであれば、優位な条件を引き出すためにISP側帯域の支持に回る可能性すらある。

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