日本音楽著作権協会(JASRAC)は2012年5月23日、「2012年定例記者会見」を開催した(写真1)。

写真1●会見に臨むJASRAC幹部
[画像のクリックで拡大表示]

 今回の会見でJASRACは、会員や信託者へのサービス拡充の一環として、インターネットで利用明細データを提供するシステムを開発したことも報告した。JASRACの曲目報告システムである「J-BASS」(放送など)や「J-NOTES」(インタラクティブ配信)のデータを利用した試用版を提供する。放送およびインタラクティブ配信における分配対象楽曲を対象に、2012年6月期の分配から運用を開始する。

写真2●理事長の菅原瑞夫氏
[画像のクリックで拡大表示]

 例えば放送では、「作品コード」や「作品名」「放送局名」「放送年月日」「番組名」「利用回数」などを把握できる。「放送局ではまず日本放送協会(NHK)と民放キー局が利用を開始する」(理事長の菅原瑞夫氏、写真2)という。

 楽曲の違法配信を防止するための取り組みも進める。例えば、インターネット上の掲示板などで違法配信ができないようにするため、著作権情報集中処理機構(CDC)が運営している「Fluzo」システムのフィンガープリント技術を利用した施策を推進する。「Fluzo」システムの簡易版「Fluzo-S」システムをレンタル掲示板などのサービスに組み込んでCD音源の違法ファイルを特定し、サービス提供事業者側で削除するという仕組みである。「既に一部のサービス提供事業者がこのシステムの利用を開始している」(菅原氏)という。

「JASRACに三つの課題」と都倉会長

写真3●会長の都倉俊一氏
[画像のクリックで拡大表示]

 会長の都倉俊一氏(写真3)は、JASRACが直面している課題として三つを挙げた。具体的には、「戦時加算義務の解消」「著作権保護期間の延長」「私的録音録画補償金制度の見直し」---である。

 戦時加算義務とは、連合国民(戦勝国の国民)が戦前または戦中に取得した著作権について、通常の保護期間に、戦争期間に相当する期間(最長で約10年)を加算して保護しなければならない義務のことである。日本はサンフランシスコ平和条約(1952年4月28日発効)の規定によりこの義務を負っている。

 JASRACは日本脚本家連盟および日本美術著作権機構と共同で、CISAC(著作権協会国際連合)総会でこの問題について報告し、解消に向けた理解と協力を求めた。これを受けてCISAC総会は、各国の著作権団体がそれぞれの会員に対し、戦時加算の権利の不行使を働きかけることなどを内容とする決議を全会一致で採択した。

 現在は、各国の音楽著作権管理団体と解決に向けた協議を個別に進めているという状況である。「取り組みを少しずつ前に進めている。個人的にはこの問題について、国民的な議論を行いたいと思っている」(都倉氏)とした。

 二つめの著作権保護期間の延長は、日本の保護期間(現在は著作者の死後50年まで)を海外の主要国の保護期間(死後70年まで)と同じにするという取り組みである。「過去に文化庁の審議会で議論したが、いまだに日本の保護期間は欧米並みになっていない」(都倉氏)。

 三つめの私的録音録画補償金制度については、現行制度の実態に見合ったものへの見直しの必要性を訴えていくとする。さらに私的録画補償金の支払いを巡り東芝と訴訟を行っている私的録画補償金管理協会(SARVH)について、引き続きSARVHの立場を支持するとした。

[発表資料へ]