2013年の夏は、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)から個人を特定され“炎上”する事件が繰り返され、日本最大の掲示板サービス「2ちゃんねる」から情報が漏洩するなど、ネットの利用と個人情報の関係に再考を迫る事件が相次いだ。2013年9月に書籍「個人情報ダダ漏れです!」(光文社刊)で個人情報の漏洩の実態をわかりやすく解説している関東学院大学経済学部准教授の岡嶋裕史氏に、情報を収集するサービス事業者と、個人情報の持ち主であるユーザーとの意識のギャップを中心に話を聞いた。

(聞き手は松本 敏明=ITpro

最近、ネットでの振る舞いに対して個人を特定され“炎上”する事件が相次いでいる。ユーザーの側に変化があったのだろうか。

関東学院大学経済学部准教授の岡嶋裕史氏
関東学院大学経済学部准教授の岡嶋裕史氏

 インターネットの黎明期から、「漏れたら困るだろう個人情報」はネット上に載っていた。ただそれぞれのサービスの接続性が悪かったことや、参加しているユーザーが少なく互いに仲間意識があったことで、情報が広がることはあまりなかった。

 問題になってきたのは、サービスを提供する事業者が増え、それぞれのサービスの情報がリンクして集積していき、「名寄せ」が容易になったことがあるだろう。この結果、個人情報を特定されてしまう。

 しかもスマートフォンの普及を契機に、ネット利用のリテラシーが低い人たちが数多く参加するようになってきた。

 さらに大学で学生を見ていて感じるのは、若い世代に「承認欲求」が強いことだ。

 学生の世代はコミュニティが崩壊しており、人生の中でほかの人に認められたという経験をあまりしてこなかった。そうした人たちが、SNSで初めて人に認められる体験をしている。

 SNSでは自分の情報を公開することで、ほかの人から「いいね!」という評価を受けられる。こうして承認欲求を満たしているのだが、中にはその欲求が行き過ぎて、“炎上”事件を引き起こしてしまっている。まわりに評価してもらいたいという欲求が強く働いてしまい、自分の行動が何を引き起こすかという想像力が欠如してしまっている(関連記事:ソーシャルメディア“炎上”、企業のダメージを抑えるポイントとは、関連記事:頻発する炎上事件、企業はソーシャルメディアポリシーで防げるか)。

 コミュニケーションツールを使いこなしているうちに感覚が麻痺して、仲間内の交流だけに限られるという錯覚を起こしているという側面もある。自分たちが発信している情報が実は世界につながっていることをつい忘れてしまっているのだ。

事件が急激に増えたのは何が契機になったと考えられるか。

 個人がやっていること自体にはそれほど変わりはない。ただ数年前に国内でmixiが流行していたころは、まだコミュニティが小さかった。それがいつの間にか世界とつながるようになっていた。

 そういう意味では、フェイスブックなど広いコミュニティを持ったSNSが普及したことが大きい。

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