国内におけるiPhone 3Gの将来展望を専門家に聞くインタビューの第3弾。日本で発売されている携帯電話の新機種では当たり前のおサイフケータイ,ワンセグ,絵文字といった機能をiPhone 3Gは搭載していない。UBS証券 乾 牧夫 シニア アナリストは「そのままでは『革命』というほどの製品ではない」と,過剰なiPhone賛美に警鐘を鳴らす。

(聞き手は松元 英樹=日経コミュニケーション



iPhoneは日本でも売れるのか。

UBS証券 株式調査部 マネージング ディレクター,UBSインベストメント・リサーチ 乾 牧夫 シニア アナリスト
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 商品性を日本でアピールできるかどうか疑問だ。日本は海外市場とは大きく異なる。「ケータイは電話にあらず」という国だ。携帯電話で当たり前のように親しんでいる付加機能が,日本にはたくさんある。

 例えば日本の携帯電話にはY!ボタンがあるし,FeliCa,ワンセグ,電子メールの絵文字などがある。それらの機能に「iPod」が付いているという製品なら,日本でも可能性がある。しかし,アップルは利益を最大化したいからそんな手間はかけない。日本の携帯市場は世界の5%しかない。アップルはiPhoneを大量生産して配りたい。独特の作り込みはしたくないはずだ。

 ただし,そのまま出したら,日本の携帯電話では搭載されていた機能がないということになる。「だったら,他社より早くやるしかない」というのがソフトバンクだ。解禁日に需要のピークが出るボジョレーヌーボーみたいなものだろう。ソフトバンクの狙いは当たると思う。でも,そのままの姿では「革命」と言われるほどの製品ではない。

 たくさん売れるか疑問だが,広告宣伝の効果はあるだろう。売れても100万台。iモードの5000万台と比べるまでもない。FeliCaやカメラみたいな機能は革命だった。ただし,メーカーが主導権を握って通信事業者が動くという点では今までと違う。

iPhoneに魅力がないのか。

 iPhoneを実際に手にとってみて,タッチパネルというインタフェースが面白いと思った。だれもがわくわくするスクリーンで,インタフェースが素晴らしく,商品としては凄い。未来感を感じる。インタフェースが革命なのだ。ただ,日本のメーカーをはじめ,みんなが真似をするだろう。そうなれば,アップルは追いつかれる。

 使いにくい面もある。細かい点かもしれないが,電池すら換えられない。携帯電話では,天気やニュースをすぐ見ることができるが,オープンなインターネットだと3クリックしないと見えない。製造のプロに聞くと,みんな冷静だ。「日本で販売するなら,あれはない」と言っている。

NTTドコモは,今回販売しない。

 NTTドコモは,iモードやワンセグ,FeliCaをサポートするならiPhoneが欲しい。従来のモデルがレベニュー・シェアだったこともあり,日本では大したことがないとNTTドコモは踏んだのだろう。それだったら「お互いやめましょう」ということになったのではないか。

3G版で,ビジネス用途の機能を強化した。

 パソコンのように,ビジネス・ユーザーの生産性を上げたいという背景はあるだろう。携帯電話ではなく,パソコンを手のひらサイズにするというコンセプトだ。企業向けには,無料通話と無料メールが必須だ。とにかく安い電話機が必要とされる。

 個人情報の保護も必要だ。法人向けではカメラ付きは受け入れられないことがある。機能過多は,法人向けとしては逆によくないことが多い。