しかし私は、本件に関してLINEは韓国の国情院に抗議するのではなく、日本政府へ相談するべきだと考える。もし韓国の情報機関が日本で違法な情報収集を実行しているとしたら、それは一企業だけで対抗しなければならない話ではないからだ。

 このように、国家の情報機関と対峙しなければならない組織やサービス提供者は、相手が韓国であろうが他の国であろうが、国家による違法行為を前提とした諜報活動と単なるサイバー犯罪を明確に分離した対応を取らねばならないことを肝に銘じておこう。サイバー空間とはそういうものだと意識したうえでの対応が求められる。

 さらに、日本国内において外国の情報機関などによる違法行為を伴う諜報活動への対抗を個々の企業で孤軍奮闘しているが、国としても企業サイドに対し「対策せよ」と指導するだけではなく、海外からのこのような脅威から日本企業や国民を守るための方策を具体的に用意しなければならない。

 一方、ユーザーは利用しているあらゆるサービスで「完璧は存在しない」ことを念頭におく必要がある。様々な情報管理を自分自身で意識しなければならない時代に直面したことを理解してほしい。その上で現在起きている「社会そのもののIT化」の恩恵を最大限に享受したい。

西本 逸郎(にしもと いつろう)
ラック 取締役CTO
1986年 ラック入社。北九州市出身。2000年セキュリティ事業に転じ、日本最大級のセキュリティセンターJSOCの構築と立ち上げを行う。さらなるIT利活用を図る上での新たな脅威への研究や対策に邁進中。情報セキュリティ対策をテーマに講演、新聞・雑誌などへの寄稿など多数。
代表的な社外活動は、日本スマートフォンセキュリティ協会 事務局長、セキュリティキャンプ実施協議会 事務局長など。著書「国・企業・メディアが決して語らないサイバー戦争の真実」(中経出版)。2009年度情報化月間 総務省 国際戦略局長表彰、2013年情報セキュリティ文化賞受賞など。

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