「開発需要が盛り上がり、技術者不足が懸念される今でも、地方のソフト開発会社が結構つぶれている。人月単価が低くなりすぎて、採算が取れなくなったからだ」。ユーザー企業とITベンダーの両方の経営幹部を務めた、あるコンサルタントがそんな話をしていた。

 この人も指摘していたが、今のように景気回復に伴いユーザー企業のシステム開発案件が増え、需給バランスがITベンダーに有利になっても、SIにおける人月単価はそれほど上がらない。結局、前回の好況期の水準まで人月単価が上昇すること無く終わるだろう。実は、過去何度もあった景気の山における人月単価は一貫して下がり続けてきたのだ。

 それでも大手SIerなら、比較的カネ払いの良い金融機関や公共関連に多数の顧客を抱えているので、「景況は良くなっても顧客のコスト削減要求は依然として厳しい」と嘆くものの、まだ恵まれている。一方、コストにシビアな製造業や流通・サービス業を主な顧客とするSIerは、コスト削減の努力を全て顧客に取り上げられ、売り上げが増えても低収益に甘んじざるを得ない状況が続く。

 下請けや孫請けなどのソフト開発会社はさらに厳しい。金融機関や公共関連の仕事を発注してもらえる“勝ち組ファミリー”のメンバーならよいが、そうでなければ状況は悲惨だ。人月単価40万円台といった低料金が常態化し、なんとか不況期を耐えてきた企業も、好況時にも利益が出ないとあって経営が立ち行かなくなるのだ。

 こうした不幸は今のところ、IT業界の多重下請け構造の“ボトム”での出来事で、IT業界総体としては、カネ払いの良い金融機関や公共関連の超大型案件の重なりに沸き返っている。だが、3年後にはその宴は終わる(関連記事:技術者を襲う3年後の悲劇)。その際には、SIerが多重下請け構造を利用して技術者を低コストで調達する日本型SIモデルは、その破綻が明らかになるはずだ。

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