昨今、セキュリティ業界では複合機が話題になることが増えてきた。セキュリティ業界団体Cloud Security Allianceの創設者の一人であるミカエル・サットン氏は、EWS(Embedded Web Server)の危険性を何度となく指摘している。

 EWSというのはネットワーク機器に組み込む形で搭載されるWebサーバーである。複合機やテレビ会議システム、Web監視カメラ、IP電話機など多くの機器が、内部にWebサーバーを搭載している。

図1●狙われる複合機の組み込み型Webサーバー
ほとんどの複合機がEWSを初期設定でオンにしている。システム
[画像のクリックで拡大表示]

 EWSの主な目的は、機器の自動的な構成管理や遠隔地からの保守点検、課金情報の収集などだ。複合機メーカーなどのシステムと通信して、必要な情報をやり取りする。そのため(1)外部からアクセス可能な状態になっている、(2)Webサーバーとしては簡素な構成になっている、という特徴がある。

 実はこれが、「セキュリティ対策の不十分なWebサーバーをインターネット上に公開している」状態を生み出している可能性がある(図1)。

複合機が踏み台にされる

図2●EWSの主要な問題点
業務システムや一般のWebサーバーとは異なり、積極的な管理はまず行われない。それに起因する問題が発生しがちだ。
[画像のクリックで拡大表示]

 EWSがセキュリティ上危険な理由はいくつか挙げられる(図2)。サットン氏は、「メーカーは複合機を出荷した後、全くEWSにセキュリティパッチ(修正プログラム)を当てていないことが多い」と指摘する。セキュリティホールが放置された状態のEWSを搭載した複合機は、企業ネットワーク内に設置された“トロイの木馬”とさえいえる。

 例えばEWSの多くは、WebサーバーソフトにApache HTTP Server(Apache)を搭載している。Apacheは多数のバグが存在するソフトで、バグが発覚するたびにパッチを配布している。あまりの多さから、「A Patchy Server」(パッチだらけのサーバー)のApacheと呼称されるようになったという冗談があるほどだ。当然、Apacheには常に最新のパッチを当てておかなければ、簡単にハッキングされる。

 狙われるのはApacheの脆弱性だけではない。Linuxの脆弱性も放置されている可能性が高く、狙い目になる。Apache以外のWebサーバーソフトを搭載する複合機もあるが、代表的なWebサーバーソフトである「Rom Pager」や「NET-DK」「Virata-EmWeb」「BaseHTTP」には既にクロスサイトスクリプティングなどの脆弱性などが発見されている。

 サットン氏の調査によれば、脆弱性が検出されているEWSの例として「RomPager Ver 4.07」が374万台、「Virata-EmWeb Ver 6.01」で10万台存在するという。

 さらに、宛先情報を窃取される可能性がある点にも注意が必要だ。最近の複合機はメールやインターネットFAXなどに使う宛先情報の登録の手間を減らすため、LDAPサーバーから情報を取得できるようになっている。ここから、アドレス帳情報が外部に漏洩するといった事案が既に発生している。ドメイン管理者のIDが盗まれると、ディレクトリサービスが危険にさらされる可能性がある。