詳細なデータを取得・分析できても、改革に生かせなければ宝の持ち腐れだ。全社で共有すべきデータを素早く現場にフィードバックすることで、社員の動きを機動的に変えていく必要がある。それが「実行」のプロセスだ。ここまでできて初めて、取得・分析・実行のサイクルは一回りする。オムロンはこの3つのサイクルを回すことで、業務の効率化や顧客への的確な対応につなげている。

オムロン
3次元の図面データをグローバル共用、設計、生産から調達先まで一気通貫

 オムロンのインダストリアルオートメーションビジネス(IAB)カンパニーは2011年4月から全ての設計図面データをPDM(製品データ管理)システムで管理する体制に移行する()。2002年から段階的に進めてきた「3D(3次元)データ資産化プロジェクト」の節目に当たる。

図●オムロンは多品種少量生産品の設計から製造までを直結させる仕組みを構築
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 IABカンパニーはFA(ファクトリーオートメーション)機器を製造する。約10万品目という多品種を扱い、その数だけ図面がある。大量の紙の原本図面は国内3カ所の倉庫に保管してきた。

 「図面データを開発設計・調達・生産の各部門と世界中の工場や仕入れ先で共用することで、他社とのコスト競争や需要のグローバル化に対応したい」。プロジェクトを統括するIABカンパニー品質環境部の田辺繁美部長はこう話す。

 設計者が入力する3D図面データは、これまで段階的にCAD(コンピュータによる設計)ソフトへの移行が進み、2011年4月までに全てデジタルデータ化される。設計現場では既にこのデータを分析して、頻繁に使われる形状を流用したり、「ふたが閉まらない」といった物理的なエラーを試作前に自動検出したり、組み立て工程の複雑さを予測したり、といった形で活用している。

 設計図面の3Dデータ化による成果が最も表れているのは製造現場だ。オムロン綾部事業場(京都府綾部市)の一角にあるラインでは、センサーの一種「ファイバーユニット」を製造している。ここでは作業者が台に向かい、1個1個手作業で、光ファイバーを加工したり、ねじやレンズ、電子部品などを取り付けたりしている。ファイバーユニットの種類だけで2000品目近くあり、年に数十個しか生産しないものもある。こうした超少量生産品の製造は機械化にはなじまず、柔軟性の高い人手に頼るしかない。一方で、作業者にとって全品目の作業を習熟するのは困難だ。

多品種少量品の組み立て作業を支援

 そこで、この現場にはPDMシステムの電子図面をそのまま閲覧できる仕組みを導入した。作業者は生産する品目ごとの製造指図書に記されたバーコードをスキャナーで読み取り、自分の社員証(ICカード)をリーダーにタッチする。すると、作業台の上部にあるパソコン画面に組み立て作業に必要な図面が表示される。

 ICカードで作業者の実績を判別し、初級者だったり、前回の同一品目製造から時間が空いたりしている場合は、工場側で作業上の注意点などを加筆した詳細な組み立て図面を表示する。生産管理系のシステムとも連動しており、作業者別の出来高などの管理指標を吸い上げている。

 これによって従来のように図面のバインダーを保管してある棚に取りに行く必要が無くなり、1品目の組み立てごとに約90秒の時間を削減する効果があった。付属品を付け間違えるといった人的な不良発生もほぼゼロになった。

 これを綾部以外にも広げれば、物流費や人件費などを勘案して一番コストが安くなる拠点を算出できるので、最もコスト競争力のある拠点での製造が可能になる。図面は言語にかかわらず、作業者なら誰でも理解できる直線・曲線や数字などで描かれている。今後、中国・上海や欧州の工場などにも展開する予定。ファイバーユニット以外の品種に適用する際にも、PDMシステムから図面を引き出すだけで済むようになった。

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