メモリーの高速性とハードディスクの大容量を併せ持つ「SSD」が普及期を迎えている。容量単価が3分の1程度に下落するとともに、企業向けサーバー/ストレージへの搭載が加速し、主流となってきた。性能ボトルネックの解消を求めるユーザーにとって“当たり前の選択”になりつつある。

図1●高速ストレージとして存在感が高まるフラッシュメモリー・ストレージ「SSD」
SASやFCインタフェースの高速ハードディスクの30倍程度が相場だった容量単価は10倍程度に低下。応答速度が必要な用途を中心にハイエンドHDDの置き換えが進む
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 「30分かかっていたバッチ処理が30秒に短縮できた」「1年に3台はあった初期故障がなくなった」――。フラッシュメモリーに記録する「SSD」(ソリッド・ステート・ドライブ)が、企業向けストレージ装置の常識をくつがえす。「性能」と「信頼性」が足りないというストレージの課題を一気に解決できる。

 「高速だけど高価」というレッテルも過去のものになりつつある。導入コストの低下により、価格性能比で高速ハードディスクを超える製品へと成長してきた(図1)。

ベンダーのSSDシフトが鮮明に

 従来SSDは、株式注文など1処理当たりにかかる時間をとにかく短くしたいユーザーに応える特殊な存在だった。ハードディスクが苦手とする処理を高速化する「背に腹は代えられない」場面で使う高価な製品だった。

 ハードディスクが苦手とするのは、ランダムに大量のデータを読み出す処理だ。これは、回転するディスクからヘッドを通じてデータを読み書きするハードディスクの構造上の弱点といえる。ハードディスクのパフォーマンスを上げるには、ディスクを複数台並べたRAID0構成で負荷分散することが定石。しかし「データベースのサイズは数百Gバイトが相場。必要な性能が得られるまでハードディスクを並べると、テラバイトを超える総容量のほとんどが未使用という事態が起こり得る」(日本ヒューレット・パッカード ストレ ージワークス事業本部の瀧澤一彦担当マネージャー)。

 ディスク台数が数百ともなると、設置場所や消費電力、1台10万円弱の高速ハードディスクにかかるコストが馬鹿にならない。

 こうした高速ハードディスクの“力技”に対して、価格性能比でSSDが追いつき、追い越す勢いだ。機械部品としてこれ以上の性能向上やコスト削減が困難なハードディスクに対し、半導体であるSSDは「ムーアの法則」に乗ってチップ当たりの容量が増え、容量単価が落ちてきたからだ。2009年から10年にかけて1ドライブ当たりの容量は数十Gバイトから数百Gバイト台へと1ケタ増。容量単価は「ハードディスクの30倍から、10倍程度にまで下がった」(日本IBMストレージ・テクニカル・セールス ソリューション担当部長の佐野正和システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト)。

 価格低下は加速する。ハードディスクメーカー大手が、企業向けSSD市場に雪崩を打って参入するからだ。「企業向けの3.5型高速ハードディスクの新規開発はやめ、2010年内に企業向けSSDに参入する」。日立グローバル ストレージテクノロジーズ(GST)製品企画部の木下尚行シニアプロダクトストラテジストはこう断言する。日立GSTは、性能重視のSSDと大容量に特化したハードディスクに製品ラインを絞り、米STEC、米インテル、韓国サムスン電子などのSSDメーカーに対抗する。PC向けSSDで先行する東芝も、2010年内に企業向けSSDを投入する。米シーゲートテクノロジーも、韓国サムスン電子と提携してSSD市場への参入をうかがう。

 以下ではまず、先進ユーザーの導入事例と製品動向をみてみよう。ここ1年で、ストレージ/サーバーでのSSD採用製品とその導入事例が広がりを見せた。ハードディスクの性能ボトルネック解消を求めるユーザーの声に、現実的な価格で提供できるとみたITベンダーが応えた格好だ。

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